花束の行方を想いながら花を見繕う

 今日も男子中学生が花を買いに来ます。
 花屋で店番をする同じく男子中学生の主人公は、花束を見繕います。値段不相応の花束を。
 中学生ですから、お客さんとして来る男の子たちはそんなにお金を持っていません。
 そんな男の子たちに対して、支払われるお金以上の花束を見繕うのは、主人公が優しいからなのでしょうか。もちろんそれもあるのでしょうが、それだけではないようです。

 この花束がどのように使われるのか、そして誰に渡されるのかを、主人公は知っています。
 同級生でお金を持っていないとはいっても、お客様ですから、主人公はその依頼を断ることはできません。

 花束の行方を想う主人公の葛藤がストレートな文体で表されていて、思わず感情移入してしまい、最後まで引き込まれました。
 終わり方がまた素晴らしく、読後感が非常に心地よいです。

 とても素敵な恋愛小説でした。
 おすすめです。