番勝負

@timdog444

番勝負

叡王戦番勝負が始まってから50余年が過ぎた。

勝負は幾度も持将棋を繰り返し、決着がつかないまま引き伸ばされている。

そして今日、叡王戦第536局が行われていた。


一人の老人がモニタ越しに対局者を見ている。

時代を彩った棋士が老いてゆくなか、盤を挟む二人は未だ紅顔の若武者であった。

「この人達は変わらないな」

老人は自らの人生を回顧する。

度々「将棋の神に愛された」などと大それた評を受けてきたが、真に神から寵愛を受けたのはこの二人ではないだろうか。

永遠に将棋を指すことが許されているのだから。


「そろそろ移動してください」

スタッフから呼びかけられる。今日は引退会見の日だ。勝負の結末を後の楽しみとして、老人は控え室を後にした。

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