終章

――あの自己主張の一件で俺は吹っ切れた。


あやの外面の良さが表面化したので、学年から及び先生方からの評判はガタ落ちである。

文化祭の後、事態を重く見たのか先生方で緊急学年会議が開かれ、俺とあや双方ヒアリングがあった。

あやには当分生徒指導室に登校及び同級生との接近禁止令がだされた。

俺が「とにかく菅原さんから離れたい」と言ったのが決め手になった。


あやは決まりを破って俺の教室に乗り込んできた。

「私を怒らせるてっちゃんが悪いじゃん! 恥かいた!」

教室の雰囲気が水を打ったような静けさになった。

「私だってちょっとぐらい素を出したっていいじゃん!」

ギャラリーの前であんな醜態見られたんだから多少は反省すると思ったのに。

正直言って知らんがな。

「わたしは、てっちゃんのごどが、ずぎだがら・・・ゆるぢでー」と土下座と号泣し始めた。

謝罪のやりかたが演技っぽい。

「許すかどうか俺が決めることだ。お前に言われる筋合いない。ちなみに一切許す気ない!」

「お前女優目指せよ。アカデミー賞総なめだぞ」と俺が皮肉を投げるとクラスメイトたちがクスクス笑う。

「じゃぁ渋谷は助演男優賞だな!」

と他のクラスメイトが茶々を入れる。

「君の状況は『It's no use crying over split milk(こぼれたミルクを嘆いても仕方ない)』だ。学年トップの菅原さんならわかるよね?」と教卓から一連のやり取りを見ていた深澤が軽いノリで言う。目が笑ってなかった。

深澤のマジギレモードだ。そして淡々とした口調になる。

「君は反省の欠片ないね。ここにくるな。戻れ」

深澤の低いトーンに恐れ慄いたのか、あやは逃げるように教室をあとにした。


正直胸がすっとした。ざまぁみやがれ、バチが当たったんだ!

というか深澤怖い。

「渋谷くん、また菅原さん絡みでなにかされたら教えてねー。よろぴく!」

いつもの深澤に戻った。


もうあやに振り回されたり殴られたりされることがない。

俺も心置きなく他のクラスメイトとだべったり遊んだりすることができるようになった。



――菅原あやの外面の良さはアカデミー賞ものである。なら俺は助演男優賞。


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<5分で読書>外面いい彼女に疲れたんで、もう別れていいっすか? 月見里ゆずる(やまなしゆずる) @nassyhato

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