202011 ジャパロボ 43

渋谷かな

第1話 ジャパロボ43

「私の卒業式は、みんなに祝ってほしいな。アハッ!」

 強化人間から普通の少女に戻った麻理子のささやかな願いだった。


「麻理子さんー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その願いも虚しく、さとみたちの目の前で麻理子が爆発した。

「そんな!?」

「クッ!?」

 すずもイリスも悲しみと悔しさを噛み締める。

「悲しむ必要はない! 直ぐに会わせてやるぞ! あの世でな!」

 無限の触手と高エネルギー砲で同時に攻撃を仕掛けてくる大江都知事。

「うわあああああー!?」

 悲しみに包まれたさとみたちは劣勢に立たされる。


「私は出る! 機体はないのか!? 機体は!?」

 優子がキレている。麻理子が目の前で倒されて、居ても立っても居られないのだ。

「ダメだよ。優子。祐奈教官が無理するから優子はジャパロボに乗しちゃあダメって言ってるんだもの。上官の祐奈教官の言うことは自衛隊では絶対だよ。」

 しかし久美に止められる。

「私が、私が出ていれば、麻理子さんがあんなことにならなかったはずなんだ!? 私さえ出ていれば・・・・・・。どうして私のジャパロボがないんだ!? うおおおおおおー!」

 何もできない自分が歯がゆい優子は涙を流す。

「優子・・・・・・。」

 久美にも優子の悔しさが伝わってくる。

「ありますよ。ジャパロボ。」

 そして、物一人にも優子の気持ちが伝わる。

「令和ちゃん!?」

 優子の想いが伝わったのがAIロボットの令和ちゃんだった。

「優子さんは意識高杉さんで仲間よりも任務優先していて、誰かを思いやるような人ではないと思っていました。でも麻理子さんがいなくなったら泣ける人に変わっていたんですね。」

 確かに以前の優子なら大好きな祐奈以外に興味はなかっただろう。この全国ジャパロボ大会を通じて多くの人々と接するうちに優子の心に他人を思いやる心が生まれた。

「思いだけでは何もできません。力が無ければ何もできません。あなたの思いを叶えるジャパロボが必要です。」

 地面から新しいジャパロボが出現する。

「こ、このジャパロボは!?」

「地の精霊ノームのジャパロボです。私、風の精霊とお友達なので。アハッ!」

(おまえが令和ちゃんかい?)

「はい。AIロボットの令和天皇です。宜しくお願い致します。」

(シルフィードの友達の頼みなら断れないな。)

「ありがとう。ノームさん。」

「よ、よろしく。ノーム。」

 不器用な優子。

(二人とも早く乗りな! 仲間を助けに行くんだろ!)

 優子と令和ちゃんはノームに乗り込む。

「リンク!」

 令和ちゃんは元々のジャパロボのAIロボットとして地の精霊ノームに自らを接続する。

「優子さん、私がサーポトします。さとみちゃんたちを守ってください。」

「ああ、そのつもりだ。もう誰も悲しませない! 地の精霊ノーム・ジャパロボ! 優子! 出るぞ!」

 新しい優子の戦いが始まる。

 つづく。

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202011 ジャパロボ 43 渋谷かな @yahoogle

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