第2話

 「運命の人……結婚相手……まだ高校2年生なのに……」

 両親(特に母)からのカミングアウトが衝撃的すぎて、私は寝不足だった。一睡も出来ず、母から言われたことをぐるぐると頭の中でリピート再生。

 人魚の血が入ってます、というところまでは理解出来たし、なんとなく受け入れられた。問題はその後だ。

 ――「あと1年で運命の相手を探さなきゃいけないもの」

 お母さん曰く、18歳の誕生日までに運命の相手を見つけないと私はこの世からきえていなくなるらしい。まるで、幼い頃読んだ人魚姫の結末のようだ。

 まだ17年しか生きていないのに運命の相手なんて見つかるわけがない! と言ったが、お母さんはあっけらかんと「案外見つかるものよ」と言っていた。両親は高校で出会い、そのまま交際結婚まで行ったそうなので、説得力はまあまあある。

 朝方になると私は頭の中のリピート再生を切り、スマホで一生懸命「運命の相手の探し方」を調べた。しかし、どれも抽象的な内容ばかり。「運命の相手は輝いて見える」「初めて会ったときにピンと来る」など書いてあったが、今のところ該当する人物はいない。

 「どうしたものか……」

 「おーい、もあ」

 「運命の相手…」

 「うんめいのあいて?」

 「うわ、倖斗こうと!」

 いつの間にか隣にいたのは同じクラスの紅野くれの倖斗こうと。見た目はチャラくてまるでヤンキーのような顔つきだが、生徒会副会長をしている。誰とでも仲良く出来るタイプで、私も時々倖斗と話す。

 「そこ、お前の下駄箱じゃねーぞ」

 「あ」

 「なに、寝不足? 目の下くっきり隈ついてるぞ」

 倖斗が自分の目の下を指さし、にひひと笑っている。消えるはずもないが、私は一応隈を消すように指で擦った。

 (もしかしたら、倖斗が運命の相手かも?)

 と、思い私はじっと倖斗の顔を見つめる。穴があくんじゃないかと思うくらい、じーっと見つめる。

 「な、なんだよ……」

 しかし、残念ながらキラキラしたなにかは見えないし、ピンとも来ない。残念ながら彼は運命の相手ではなかったようだ。

 「なんでもない」

 「そうか? まあいいや。そんなことより、ちょっと来いよ」

 「え、なんで? カツアゲ? やっぱりヤンキーだったんだ……」

 「やっぱりってなんだ! ちげぇよ。会長がもあのこと呼んでんの」

 面識ない生徒会長が私のことを呼んでいる。嫌な予感はしたものの、無視すると後が面倒くさそうなので倖斗と共に生徒会室へ行くことにした。

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海の藻屑となる前に しゅがっぺ @sugarpear88

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