第九話 『出会い』
門前で白と別れ、闘技場へ向かった零士
中に入ってみるとたくさんの人が
戦う番に備え、自己鍛錬に励んでいた
いろんな人がいるなーみんな強いのかな?
異世界人·····まあ同じ故郷のやつが
一人でも居てくれたらいいけど·····
とにかく俺は歩き疲れたから
椅子にでも座って少し休むとしますかー
椅子に座って腕を膝に置き、何も考えず
目を瞑り、顔を地に向けぼーっとする
そんなことをしていると
とても威勢のいい女子の声がしてきた
「ねえそこのあなた!」
誰かに話しているのだろうか
·····しかし話しかけられている
それなのになぜか周りの人達がザワつき始めた
おい無視とかそういうのはやめてあげろよ
相手がわざとじゃなくても自分の存在が
否定されてる気分になって
めっちゃ悲しくなるんだよ·····ソースは俺
そんなどこかの比〇谷くん的な事を
考えていると―
「あなたに言っているの!黒服の君に!」
―と声がさっきより近づいて聞こえた
黒服?·····まさかだとは思うけど·····俺?
いやいやまさか〜!
·····だって俺女の子に喋られるような
キャラじゃないし·····気のせい·····だよね?
ふとそんなことを思い顔を上げてみると
案の定、女の子が零士の前に立っていた
赤髪のロング·····腰には·····黒い剣がある
握りの長さ的に両手剣だろうか
そしてこちらを見ている·····なんで?
零士は自分に指を指して
『俺?』と身振りをして聞く
「そうだよ!君だよ!そこの君!」
腰を
零士に指を指してそう叫ぶ
その声に周りの人がさらに反応する
わーざわざわしてる·····
目立つの嫌だから叫ぶの止めて
「え·····俺なの?·····なんで?」
本当になぜ俺なんだ·····
「理由は簡単·····あなた·····余裕があるのね!
もうすぐ大切な試験があるって言うのに
椅子に座ってぐっすり寝るなんて
自分の力によっぽどの
自信があるってことかしら?」
·····あーそういう事ね·····個人の自由じゃね?
だってここまで来るのにずっと徒歩だよ?
瞬間移動とかの魔法まだ持って無いし
わざわざ魔力使うのも勿体ないし
魔力使うのも結構疲れるんだよ?
少しくらい休んでもいいじゃん
―などと文句を心の中で垂れ流す零士
しかし顔には出ない·····真顔である
零士はその場で立ち上がり―
「あー悪かった、少し疲れていたもので·····」
―そう言って立ち去ろうとした時
赤髪の少女は「待ちなさい!」―と
一言、零士の後ろ姿に言った
その声に反応して立ち止まる零士
「·····まだ何か?」
「あなた·····お名前は?」
そう聞かれると零士は答える
「暁零士だ」
それだけを言って立ち去った
主人公の様な余裕を見せつけた
零士であったが内心では·····
ああ言うのには関わらない方が身のためだ
あとで何されるか分かったもんじゃない
早く撤退しなければ·····
―などと早く逃げることばかりを考えていた
赤髪の少女から立ち去った零士
彼女が見えなくなると壁にもたれかかり
ここ一番の深いため息をした
はー疲れた·····なんだ
急に突っかかってきやがって·····
ここ最近の中で一番疲れたかも
―などとさっきの少女の愚痴を思っていると
男二人組の会話が聞こえてきた
「おい聞いたか?あの噂」
「ん?なになに?」
「なんかね聞いた話によると今年の試験·····
エルニカ王国の第一王女様が
出席してるんだってよ!」
「え、まじか!?」
「まじまじ!」
「王女様の対戦相手は気の毒だな」
「ああ、俺も当たらないことを願っておくよ」
エルニカ王国 第一王女
『エレノア フォン アルトマイヤー』
現国王
『アレクサンダー フォン アルトマイヤー』
の長女にあたる
剣や魔法の才能は素晴らしく
聖剣学院主催の大会では優勝
魔術学院主催の大会では準優勝を
優勝を納めるほどの実力
そんな彼女が使っている剣は
とある魔剣らしいが·····
まあ確かにそんな完璧お嬢様と
戦わせられる
俺も面倒なことはしたくないし·····
なるべく当たらないように願わねば·····
「ではこれより試験を開始致します!
最初は特別クラスの試験になります!
特別クラス希望の方は
待合室でお待ちください!」
―と大きな声で係員が呼びかける
おっと·····もうそろそろか·····
よしっ行きますか!
零士は静かに立ち上がり待合室へ向かう
待合室に着くと数十人の人達がいた
剣の手入れをしている者も居れば
魔法のイメージトレーニングに励む者
体力を温存し、待機している者まで·····
さて俺も休むか·····椅子が埋まってやがる·····
しゃうがない·····壁にもたれかかるか
壁にもたれかかって目を瞑る
さっきはあの赤髪の
俺の休憩を邪魔されたからな〜
今回は誰も来るなよー
そんなことを思った矢先
聞き覚えのある声が聞こえてきた
「また会ったわね」
瞑っていた目を開けて、前を見ると
さっきの赤髪の少女だった
さっきと同様周りがざわめきだす
またかよ!!·····はぁ〜·····
彼女は俺に休憩を与えてくれないのか
なんだ新手のいじめか?泣くぞ!泣かないけど
「ああ、さっきぶりだな·····どした?」
話しかけられたので『なんの用事だ?』
と言わんばかりの態度で聞く零士
「いや·····特に用事とかはないのだけれど·····
なんとなく君が他の人と違って
異質に見えたから気になって·····
優しい言葉で言うなら·····特別に見えたから
·····かしら·····あなたがもってる
その異形の剣も今までに見たことないし·····
あなたには少し興味があるわ」
まあ異世界人ですから·····
異質に見えても仕方がないな
ってことはオーラとかそういうの見えるのかな
あと刀ってこの世界流通してないの?
てっきりあると思ってた、白にあとで聞くか
「そう見えるのは気のせいだと思うよ」
そう言って誤魔化す零士
そう言うと少女は
「まあ·····そういうことにしておいてあげる」
―と、まるで見透かしているかのように言う
「ありがとよ·····あっそうだ·····」
詮索をしないことに感謝をしつつ
何かを言いかける零士·····そして―
「名前·····なんて言うの?」
―と赤髪の少女に聞く
その瞬間周りの人々は驚き
さっきのとは比にならない程にざわめきだす
まるで誰かが禁忌を犯したかのように
なんでそんなにザワついてるんだ?
俺はただ話しているだけ·····
その瞬間
この試験にあの王女が居ることを思い出した
王女の容姿は·····
赤い目、赤い髪、魔剣······え?·····
·····まさかだとは思うが·····もしかして·····
そう·····零士は気づくのが遅すぎたのである
「おっとこれは失礼·····申し遅れていました」
彼女が·····
「私はエルニカ王国第一王女
『エレノア フォン アルトマイヤー』と
申します。以後お見知りおきを·····」
彼女が·····噂の第一王女だと言うことに·····
いや·····まじですか·····
《 神様との異世界生活 》 少年はこの世界を存分に楽しみます! 雪村 不吹 @yuki-mura
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