第5話

 「さて‥とてもとてもやりたくないけど、やるとしたら聞き込みからよね。」


 ヒガンはそう言い、街に繰り出した。が、すぐに立ち止まりあたりを見渡す。どうやら話しかける人物を検分している様だ。

 道行くものは、皆同じ様な顔をしていた。何処に向かうかも知れない急ぎ足で、皆通り過ぎていく。


 「ん?あれは…」


 ヒガンはその雑踏の中で、一際目立つ人物を目にする。自分と同じ様にあたりを見回しているが、ヒガンとは違い、まるで迷える子羊の様な、まだ汚れを知らない子供だった。

 …その割には、やたらと黒いが。


 「お嬢ちゃん。どうかしたの?」


 少女は安堵したように振り向いた後、ヒガンの姿を見て顔を強張らせた。話しかけたのに、随分と酷い。


 「えっと、探してるんです。」


 今度はヒガンが眉を潜めた。少女の言葉には主語がまるで抜け落ちていた。ここから連想するのはいくらヒガンでも無理な話だ。


 「……何を?」


 ヒガンは長考の後、振り絞るように声を出した。


 「あっ、花畑です。」


 花畑、という言葉にヒガンは少し反応する。わざとでは無いだろうが、やはりキーワードには反応してしまうものだ。


 「なんの?」


 ヒガンは言った後、この地区には花畑なんて無いことに気づく。気のせいが疑惑に変わった。


 「えっと、赤い花……ヒガンバナ!ヒガンバナが沢山ある所です!」


 疑惑が確信に変わる。この黒い少女、やはり何かを知っていそうだ。


 「私、その花畑を知っているわ。よければ案内してあげられるけれど、どうする?」


 その言葉に、少女は目を輝かせる。


 「本当ですか?ありがとうございます!」


 自分が言ったこととはいえ、ヒガンはこの少女はこの疑わなさで今まで生きて来れたものだなと、少し心配になった。



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賽の目ヒガンの純愛 ミニマル @minimaro

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