第4話

 「ヒガン。お前もわかっているとは思うが、あの花畑は見事なまでに荒らされている。私はこの目で見たわけではないが、相当ひどい様子だと聞いた。」


 花屋の奥に、老けた女性が座っていました。ヒガンほどではないが、相当の貫禄を持っていた。そうまるで、ヒガンの前任の様な、そんな貫禄と圧を持っていた。


 「お前はあの花畑をひどく愛用していたな。そこで私も考えたのだが、あの花畑を壊さずに残すことができるやも知れん。」


 その事実を聞いたヒガンは、少なからず驚いた。壊すほかないと思っていたので、緊張が解けた気分だった。


 「その、方法というのは?」


 「許可なく口を聞くではないぞ、ヒガン。お前の所属などこちらで簡単に取り決められるのでな。」


 女性は重々しく言いました。その場の空気が落ちていく様で、ヒガンは己の立場をまた意識しました。


 「その方法というのは、一つしかなくてな。荒らした犯人を見つけ、元に戻させるしかない。魔力を使った後があったのでな。使った本人なら容易に戻せるであろう。」


 「しかしだ、我々は其奴を探すほど暇ではない。あの花畑を復活させたいのならば、おまえが探すことだな。まあ、出来るかどうかはわからぬが。」


 ヒガンは少し深呼吸をし、自分を落ち着かせて言いました。


 「ありがとうございます…お燐様。」


 「うむ。もう下がるが良い、ヒガン。聞きたいことは終わっただろう。」


 ヒガンは深く頭を下げた。そして極力音を立てない様に、その場を去った。


「お、ヒガンちゃん、帰ってきたね。どうだった?相変わらずよく分からない人だよねえ。」


 「…ええ、そうね。あの人を理解できるのは相当な苦労が必要だと思うわ。」


 そして、ヒガンはこの場を去った。せめてもの捨て文句を残し。


 「この‥老害が。せいぜい苦しんで死になさい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る