第3話

 街。それはいかにも街といった雰囲気の街だった。いや、街だから当然なのだが。


 しかし、賑わいも程よく有り、自然も心地いいくらいに街に溶け込んでい、出店も程よく需要を満たしている、こんな理想的な街はなかなかないだろう。


 人が多く、聞き込みには向いている街だったが、ヒガンはむやみやたらに聞いて回ろうと云うわけではなかった。


 「‥さて、あの人はいるのかしらね‥いつも放浪しているから、会えたらラッキというところだけど‥。」


 そう言いながら、ヒガンは花屋に向かった。すると慣れたふうな店主と思われる人が、ヒガンに近づいてくる。


 「やぁ、ヒガンちゃん。今日はなんの用だい?その顔を見ると、あまりいい知らせではなかったようだけど‥ねぇヒガンちゃん、ほんとにどうしたんだい?すごく顔色が悪いけど‥」


 するとヒガンは取り繕うように喋りだす。


 「なんでもないわ。少し、考え事をしていただけよ。それより、今日ははいるのかしら?」


 店主は少し声を潜めて言う。


 「ああ、居ると言えば居るけどね‥あまり、合わない方がいいと、僕は思うよ。今、なぜだかすごく機嫌が悪いから。」


 ヒガンは疑問に思う。


 (機嫌が悪い?もしかして、もうこのことを知っているのかしら?だとしたら、本当に怖いとしか言いようがないけど‥。)


 「構わないわ、私が来ているといったら通してくれるでしょう。…私の予想通りなら。」


 「へえ、ヒガンちゃんが言うのならそうなんだろうねえ。まあ、伝えておくよ。…ついでにだけど、何があったんだい?」


 ヒガンは少し言うべきか迷ったが、どうせ理解できないだろうと思い言うことにした。


 「私、時々奇妙な花を持ってくるでしょう?」


 「ああ。あのよくわからない花ね。」


 「あれ、私の近所から摘んでくるのだけれど、今朝見てみたら、その花畑が荒らされていたのよ。それで、私はその原因探しってわけ。」


 「ふうん。へえ。そうなのかい…」


 案の定、店主はよくわからないといった顔をしていた。そのことにヒガンは少し、安堵した。現世の人間に理解されると、少し困るのだ。


 「あ、ヒガンちゃん。…通っていいって。ほんと、何がなんだかさっぱりわからないけど、まあ、がんばってね。」


 店主からせめてものエールを受け取ると、ヒガンは店の奥に消えていった。

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