第2話

 「‥ここがその、あの花畑なのね。」


 ヒガンは今だに信じられないというふうに、瞬きをした。ヒガンのいる賽の目では、そういう生理現象は起きないはずなのだが。


 「こうなっていると分かっていたら、部下の一人くらい連れていたわよ‥」


 ヒガンがそういうのも無理はなかった。

 花は一つ残らず枯れ果て、柵は錆、飛び交っていたカラスは危険を感じたのか一匹もいなかった。


 「どういうこと?この花は枯れることなんてないはず…現世うつしよで、何があったというのかしら?」


 ヒガンの存在を感知したのか、一匹のカラスがこちらへと向かってきた。皮肉なことに、いつもの花畑より世紀末なここを飛んでいる方が様になっていた。


 「うん。そうね。一人で思い悩むより、聞いてみた方が早いわ。」


 ヒガンは手招きしてカラスを呼ぶ。するとカラスはすぐに降りてきた。


 『何か用かい、女王さま!まぁ、この状態のここに来るって言うことは、ここに関することなんだろうが‥。』


 いつにもましておしゃべりなカラスに、ヒガンは眉を潜めた。おしゃべりは嫌いなようだった。


 「ええ、あなたが想像する通りよ。知ってること全部話して頂戴。言っておくけど、すべてを話すのよ。隠すのは許さないわ。」


 その機嫌に対応するかのように、語調がきつくなっている。


 『なんだか、いつにも増して不機嫌だな。まあ良いや。オイラがこの異変に気がついたのは、二週間前だな。俺の友達はみんなもっと早くに気がついてたみたいだが‥僕が知ってるのはここまでだぜ。力になれなくてごめんよ。』


 「‥一人称を統一しなさいよ。気が散るわ。」


 ヒガンの機嫌はさらに悪くなったようだ。カラスは命の危険を感じて飛び去る。


 「まあ、まだ1人目だからね。これからよ。」


 そう言いヒガンはどこかにさっていった。

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