エピローグ~アレス~

……久しぶりに夢を見た。


和馬と結衣がいて、おじさんとおばさんもいて……。


結衣が赤ん坊を抱いていた。


もう、見ることはないと思っていた。


俺と和馬の繋がりは途絶えたのだから。


だから、単なる夢なのかもしれない。


でも、それでも良い……本当にそういう未来になったのだと思えるから。





夜遅くに目が覚めた俺は、焚き火の前で一人座る。


「あれから2年か……」


俺たちは新大陸を発見し、冒険者として旅をしている。


時にダンジョン探索をしたり、争いに巻き込まれたり……。


エルフやドワーフ、獣人達にも会うことができた。


龍神の使徒と言われ、祭り上げられそうにもなったっけ。


なので、基本的にはクロスは俺の影の中で待機している。


ちなみに、最近は少し落ち着いてきたので、家を借りてのんびりと過ごしていた。


「ご主人様〜」


「アレス様!」


「主人殿!」


「ど、どうした? 起こしちゃったか?」


この2年ですっかり大人になった三人が、俺に詰め寄ってくる。

おかげで、俺の身体は……うん、色々と大変である。


「その……できたのだ」


「は、はい!」


「そうらしいですねー」


「……へっ? ど、同時に?」


そりゃ……確かに、ここ最近はのんびりしてたからなぁ。


「少し時期はずれますけど……多分」


「……そっか……そうか! 三人共、ありがとう!」


俺は三人まとめて、優しく抱きしめる。


そうか……この俺が父親か。


もしかしたら、だからあんな夢を見たのかも。


そして、和馬からの伝言かもしれない。


約束通り幸せにやってるから、アレスも約束を果たせよと。


俺が結衣達に会えなくて寂しいように、和馬も寂しいはずだから。


和馬にとっても大事な人たちを、俺が幸せにしないとな。


「三人共、そろそろみんなのところに帰ろうか? みんなに会いたいし、しばらくは子育てに専念しよう」


「良いんですか?」


「アレス様はもっと冒険したいんじゃ……」


「うーん、こればっかりはタイミングがわからないですからねー」


「まあ、もっと冒険はしたいが……可愛いお嫁さん達の方が大事だよ」


「はぅ……」


「あぅぅ……」


「ですよねー」


「何より……俺にとって父親という存在は特別だ」


前世では両親を亡くし、今世では中々会うことが出来なかった。


自分の子には、そんな想いはさせたくない。


「だから……帰ろう」


「「「はいっ!!!」」」


三人が笑顔で頷いてくれる。


和馬、少し時間かかってしまったけど……。


これからは、しばらくはのんびり過ごすことにするよ。


和馬にとっても大切だった人達と幸せになるために。


だから、そっちも幸せに……頼んだよ、もう一人の俺。







~完~









最後まで読んでくださった方々、誠にありがとうございます!


私の初の異世界転生物語が、これにて完結となります。


本当はもっと書けたり、色々あったんですけど……。


当時の私が未熟だったことと、あんまりだらだら続けるのは違うかなとも思い、この形になりました。


もし書籍化した際には、そこのところを考えたいと思います。


改めまして……読者様のおかげで、ここまで来ることが出来ました。


本当にありがとうございました!



新作の異世界転生モノを書いたので、よろしかったらご覧下さいませ。


https://kakuyomu.jp/works/16817330648084137986/episodes/16817330648155998568






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出来損ない皇子に転生~前世と今世の大切な人達のために最強を目指す~ おとら @MINOKUN

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