2.(終)

「大丈夫ですか!?」

「う、うう・・・」

「藤原さん!」

「も……、申し訳ない……」

「は?」


「こないだ女子寮のパンティーを…」

「あーー、ちょっと!!!

 や、止めてくださいっ!」

「ぎゃっはっはっはっ!!!!」

戸田はシールドを構えたまま腹をかかえて笑っている。


「誰だって心当たりのひとつやふたつあるもんだ。

 警察もオレらと変わらねえってことだな」

「くそっ!」

若手警官は戸田をにらみつけながら、手にしていた拳銃を腰にしまった。


「おっ、銃をしまったか。

 お前も何か心当たりありだな?」

「うるさい、跳ね返されるなら弾がムダになるだけだ」

「ジャキっ!」

そう言いながら、取り出した警棒を伸ばして構えた。


「ほー、格闘か。

 お巡りは普段から鍛えてるんだろ? 勘弁してくれよ」

戸田はそう言いながらも 少しずつ若手警官へにじり寄っていった。


「おとなしくしろっ!」

警棒を振りかぶり威嚇の一撃をくらわせようとしたところ、戸田は流れるような手つきでそれをはねのけ、若手警官のみぞおち深くに拳を沈めた。

「あぐぅっ…」

腹をかかえて崩れ落ちた警官を見下したまま戸田は笑った。

「ふっふっ、

 さすが世界チャンピオン」


「何?」

うずくまった2名の警官は戸田を見上げることしかできない。


「応援が来ちまう前に、ちょっとテストさせてもらうか」

戸田は壁の時計を見ながら、ワイシャツのボタンを外し始めた。


「最近取り扱いを始めた、アメリカ製の肉体コントローラーだ」

シャツを脱ぎ捨てた戸田の身体は、あちこちに小さなユニットが装着されていた。

ユニットから伸びたワイヤーはすべて背中にしょった小さな制御ボックスにつながっている。


「この背中の箱には、100戦無敗のとある格闘家のすべての技データが入ってるそうだ」

戸田は2,3発拳を突き出して空手の型をやってみせた。

「さらにこの手だの足だのにとりつけたユニットにはカメラがついていてな。

 なんなら目をつぶったままでもあんたら2人ぐらいならボコれる性能があるんだとよ」

そう言いながら、戸田は身を起こし始めた若手警官に近づく。


「ま、待てっ!!」

ベテラン警官がふらふらと立ち上がり戸田を制した。


「償わなきゃならんことがある」

「藤原さん! 黙っててください!」

「パンティーの話じゃねぇよ」

ベテラン警官は拳銃を床に置き、防刃チョッキをぬぎながら続けた。


「若いころ、どエライ借金を作っちまってな。

 まあヤクザに騙されたんだが、オレもバカだった。

 ただ最悪なのは、どうにも首が回らなくなってな……」

さらに腰の警棒や受令機も外し、バチバチと自分の身体を叩き始めた。


「あるデータを売っちまったんだ」

「データ?」

戸田はいぶかしげな顔で問い返す。



「お前が背中にしょってるそれだよ!」

「ん……?

 ま、まさか、100戦無敗の?」

「ああ、

 世界のどこかでオレの分身が人を殺してるんだ」

50歳間近のファイティングポーズには一切の隙がなかった。


「償わせてもらうぞ」

「ちょ、ま、待て!!」

恐怖にひきつった表情とは裏腹に、戸田もまったく同じファイティングポーズを構えている。




「いくぞ、データ野郎!!」




--- END -----

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未来警察〜つぐないの弾丸〜 鈴木KAZ @kazsuz

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