第4話 心の火傷を負うと言う事
登山の翌日。
僕はまたもや睡魔の強い誘惑に抗えず一日中うつらうつらとしながら過ごすことになる。
これまでと違うのは胃のムカムカに襲われるという新たな要素が加わってきたからだった。
しかしながら、その翌日には志望している会社の筆記テストを受けに行かなければいけない為、少しでも準備をしておかなければならなかった。
「こんなんじゃダメかもな・・・」
僕は既に諦めモードになりつつも、働いてみたいと思った会社の為なんとか擦り切れそうになる気持ちを堪えながら翌日を迎えた。
昨日より回復してくれたおかげで頭はスッキリして試験会場へ向かう事が出来た。
試験が終わり、目下の不安がなくなったおかげで気持ちはかなり軽くなる。
少し歩きたいと思い一駅先の駅へ。
晴れているおかげで暖かく歩いていくうち少し汗ばんでくるほど。
これでたまにくるムカムカがなければもっと気分良く歩けたのにな・・・とぼやきながら僕は一人の男性の姿が目に入ってきた。
髪も髭もボーボーで服も汚れてみすぼらしいいわゆるホームレスの姿が将来の自分と重なって見えてしまった。
その不安感は中々払拭出来ず、電車に乗って地元へ向かう途中少しづつ膨らんできて僕を不安にさせていった。
普段ならこんな不安を抱く事はないのに無性に自分の将来が怖くなる。
適応障害が悪化する前に対応できて、休養はしっかりと取れ、好きな登山も出来ていたのに。
僕の心は悲鳴を上げていくことをやめてくれない。
それは火傷のように最初の処理をしっかりしても、皮膚の奥からはチリチリと熱くて痛くて痒い為掻き毟りたくなる。
そしてそこからまた菌が入り悪化する。
そんな事のくりかえしだ。
僕はまたこの苦しみを味わうのかと思うと気が狂いそうになる。
大袈裟かもしれないが、一人の時不安感に襲われると叫びたくて仕方がない。何かに当たりたくなる暴力的衝動が起きる。これは不安の種を無くさない限り消える事がないし、不安の種を消してもこの火傷が癒えない限り苦しみを堪えながら日常を過ごさなくてはいけない。
怪我や病気と違い表に出ないから理解されないから誰にも相談が出来ない。これがメンタルを病む事の恐ろしい所。
軽くても常にこんな不安に襲われているというのは真綿でじわじわと首を絞められる気分に陥る。
そんな日々が始まっている事がこの時やっと自覚する事が出来たのだった。
社会人不適合者 @kevineko
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