destruction~ただの異世界人じゃない〜
「着きましたね。」
「ええ。」
カルマとノエルは今、アルカディア王国最高の魔術学院【グラトニア国立魔術学院】の正門まで来ている。
そして今日は、学院の入学式だ。
ノエルは少し立ち止まり、歩きはじめた。
「行くわよ。」
ノエルの声を聞いて、カルマも歩き始める。
勿論、王国最高の魔術学院なので周りには貴族の後継ぎである新入生達が校舎までの道を歩いている。
「ノエル様、今日の新入生代表の挨拶どのような事を話すかお決めになられたんですか?」
今日ノエルは、新入生代表の挨拶を任されている。
理由は、簡単。
この学院の入学試験に初の満点を叩き出したからである。
「決めてないわ。」
ノエルは、カルマの方は向かずに答えた。
「ええ〜、それ大じょ ー 」
「おい、ノエル・フラムスティード!そいつは異世界人ではないのか?魔力が感じ取れない。」
カルマの声をかき消すほど大きな声で、ノエルは呼び止められた。
「あら? スリナッチ家三男アドリアン殿ではありませんか。私の奴隷は、異世界人で間違えありませんが…それがどうかしましたか?」
アドリアンの容姿は、そこらの貴族とは比べ物にならないぐらいのガタイのよさとこれでもかと鍛え上げられた筋肉が服の上からでも強調されている。
「学年トップのノエル殿が、異世界人などをこの神聖な学院に足を踏み入れさせるとは許されないことではないだろうか。」
そう言って、アドリアンはカルマを睨んだ。
「そうでもなくてよ、貴殿が思っているよりカルマはそこらの異世界人とは違うわ。第一に、私が一定の成績を残していればこの奴隷は、私の使い魔という形で入学させても良いという校長の許可を得ているわ。」
そう言って、不適な笑みを浮かべながノエルは、アドリアンを見た。
「そこまで言うのであれば!……見せてもらおう。」
その笑みを見たアドリアンは、ここまできたら下がる訳にはいかないという焦りを隠すように、カルマの方に身体を向け低い姿勢をとり拳を構えた。
「ちょ!ちょっと!ダメですよこんな所で!第一!さっきだって神聖な学園って言ってたじゃないですか!」
首を横に振り、後ずさりするカルマにアドリアンの気迫がカルマを襲う
「ええい!そんなことはもう覚えてなどおらん!いいから見せてみよ!貴様の力を!」
「ええぇ〜、そんな無茶苦茶な!」
「いいから、やってきなさい。相手の地位とか考えてあげなきゃいけない時もあるのよ。」
と、またもやノエルが不適な笑みを浮かべる。
「じゃあ、その笑みはなんなんですか…。」
と、カルマ小さく呟く。
「何か言った?カ・ル・マ?」
それに気づいたノエルが、今度はノエルに向けて不気味な笑みを浮かべる。
「い、いえ…なん ー 」
「行くぞ、カルなんちゃら!」
カルマとノエルの会話を無視して、いきなりアドリアンがカルマめがけて走ってきた。
「でぇりぁ!」
「いきなり、始めるのは!貴族として…どうなんですか⁉アドリアン殿!」
アドリアンが放った拳は手の大きさも相まって確実にカルマを捉えていた。
しかしその刹那、カルマが左腰の近くに手を構えるとそこに剣が現れ。
「魔術師破壊(マーギア・ディストラクション)」
カルマは、強く地を蹴りアドリアンの左腹を切った。
しかし何故か、カルマの剣には血はついていない。
対するアドリアンは、切られた時の体制のまま動かない。
「カルマが持っているのは、カルマの心、信意の武器【心器(しんき)】よ。これは、異世界人が魔力を持たない代わりに持てる力だと言われているわ。さらに心器には、心の持ち主によってそれぞれ違った力がやどる。ちなみに、カルマの力は【破壊(ディストラクション)】言葉のとうり壊す力を持っているわ。さらに、貴殿が今受けた技【魔術師破壊(マーギア・ディストラクション)】は、相手を直接心器で切ることによって相手の魔力原から破壊する。名の通り魔術師の源を破壊する技よ。」
「グヌヌゥ。」
アドリアンは、魔力を破壊されたことにより体に力が入らずその場に跪いてしまう。
「まぁ、今回はカルマが手加減していたから体に力が入らないくらいだけど、この技はこんなものじゃないわ。わかっていただけたかしら、私の使い魔…いえ、奴隷の力は。」
そう言って、跪くアドリアンを背にノエルが校舎に向け歩いていく。
そんな中、カルマもアドリアンに一礼して慌ててノエルを追いかける。
「なんだ、心器とは。聞いたこともないぞ、強きものが地位、名声、権力を勝ち取るこの世の中で異世界人は、最低地位だったはずだ…。」
アドリアン額に汗を流し、疑問を抱く。
Croire(クロワール) @EnHt_919
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