いやぁ、見事にどんでん返された。
話の筋としてはひとこと紹介に書いた通り、男前な探偵が告白されて鼻血を吹いては、その背後にある人間関係を洗い出すっていうシンプルなもの。連作短編の体になっていて、ミステリの内容も考えればだいたい分かるので、さっくりと楽しめると思います。
とはいえそれは大きなどんでん返しのための前振り。全ての物語を読み終え、あと書きさえも読み切ったとき、作者の緻密な話の組み立てに度肝を抜かれることでしょう。いやぁ、実にすばらしかった。
気負わずさっくりと読めますし、最後まで読み切るとなかなかどんでん返しが心地よいので、これはいいですよ。おすすめの作品です。
もし、未熟な結末であったなら、私はこう言うだろう。
「面白かった、どんでん返しだから」
だが、成熟した結末だから、私はこう言おう。
「どんでん返しだ、面白い」
前置きが必要だろう。
どんでん返し部門と前以て、タガをはめられた作品群は不幸だと思う。
半分ネタばらしをされたようなものだ。
功罪は大きい。
それをして、レビューに値する作品に出会えたことは僥倖だと思う。
鼻血描写のギャグをこの令和という時代にブッ込んでくるレトロさ。
読み手に負担を感じさせない、ライトなレトリックさ。
短編連作のように、続く事件の小気味よいテンポのシャープさ。
何より、どんでん返し部門だから、どんでん返しをしなくてはならず、それでも読む側のハードルを易々と越えてきた結末、伏線、キャラクター達、何より作者に拍手と賞賛を送りたい。
どんでん返しであることを忘れて、もう一度読み、そして騙されたい。
そんな作品である。
イケメンと鼻血。
まずこの組み合わせから、何事でござるかと興味をそそられました。
主人公の橘カイトは、今をときめく人気作家。おまけにイケメンすぎるほどのイケメンのため、モテモテです。
しかし、告白されると鼻血を出して気絶して前後の記憶を失ってしまうという難儀な体質を持っています。
このお話は、カイトが告白されることによって赤く鼻血を散らし、白く飛んだ意識を探るミステリー。
誰がカイトに告白したのか、どうやって告白したのか、もう新ジャンルとして告白ミステリーと名付けていいのではないかと思う異色のミステリーなのです。
しかし、そうかミステリーなのかと油断していると思わぬトンデモどんでん返しが!
どんでん返しがあるなんて、ネタバレじゃないかって?
いいえ、警戒して読もうとも、想像すら及ばぬ展開に度肝を抜かれること間違いなしです!
まさに天地が引っくり返るようなビックリドッキリ感を、是非皆様も味わってください。