自主企画「(まだ)存在しない物語の後日談または番外編」

 こちらはお久しぶりです。今年の四月一日に、作中作のしかもまだ本編を描き終わっていないのに番外編を書いたらとても楽しかったのでその勢いで自主企画を開催しました。


「(まだ)存在しない物語の後日談または番外編」

 https://kakuyomu.jp/user_events/16818093074716520324


 今回は初めて自主企画開催日以降に公開されたもの、という注釈をつけたので、実質書き下ろし限定。最近は皆さんお忙しい方も増えてきて、なかなか以前一緒にわいわいしていただいた方にご参加いただくことも難しくなっていたので、まあ一人二人参加してくれたらいいかな、くらいで始めたのですが、最終的に何と二十一作もの作品にご参加いただきました。

 というわけで、せっかくなのでこちらでご紹介させていただきます。作品は参加+完結済になった順番です。ちなみにカクヨムの自主企画の仕様で作品の公開前に自主企画に参加している場合、その時点での参加順となるのでリストの順番とは違っていますがあしからずご了承ください。


 ※ 現在非公開の作品についてはこちらでのご紹介も控えさせていただきました。


 1. 野村ロマネス子さま『【エピローグ】』 ミステリー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093074918384461

 レギュを満たした一作目いただきました。頼れるマッチョ、色白中性的な意地悪省エネ眼鏡美青年とさらにはフリフリツンデレ美少女に巻き込まれた主人公が飛び地にまつわる? 謎を解いた後日談。とにかくキャラが立っていて、まさに本編を読んだ気になってしまいつつ、彼らのその後をにこにこ眺めてしまう素晴らしいエピローグでした。キャサリン先輩に全部持っていかれたのはここだけの(公然の)秘密ですが、本編楽しみにお待ちしております。


 2. 月見夕さま『魔王になった君への手紙』 異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093074996936570

 タイトル通り、魔王になってしまった(らしい)元勇者であり友人へ宛てた書簡形式で語られる物語。次から次へとリストアップされていく面白エピソードに濃すぎる登場人物たち、その軽妙な語り口に引き込まれて本編が読みたい気持ちがグングン高まっていくのですが、ラスト——!? と主催の私も二度見してしまう大変楽しいお話でした。個人的には台座から抜けなくて鈍器になっちゃった聖剣の件、何回読んでも笑っちゃいます。こちらも本編がとても楽しみですね。


 3. 田原 更さま『短編:冒険譚のその後の話』 詩・童話・その他

 https://kakuyomu.jp/works/16818093074735398436

 野原に咲いているすみれを見て誰かを思い出している主人公ヨランダ。老人と穏やかな暮らしをしているようですが、その後悔と冒険の一部が静かに語られます。もともと一つの作品として完成されていたようなので、これ一作で十分に余韻のある美しい作品に仕上がっている印象です。姫と騎士との間に何があったのか、別離を選んだヨランダのその後なども、いつか語られる日が来るのを楽しみにしております。


 4. サトウ・レンさま『切り離された世界で、ふたりは ~アフターストーリー~』 現代ドラマ

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075063927403

 無人島に不時着した何やらわけありの二人。この先、彼らがどうサバイバルしていくのか、という物語が始まるのかな……? と思いきや、二人が洞窟の中で見つけた白骨死体こそが物語の本編のようで。モノローグで語られる過去から、何やら彼らが長い時間をかけて絆を深め、そして死んでいったことが伝わってきます。いったい彼らはどんな人間で、何があったのか。どうして終わりを迎えたのか、いつか本編が読めるのを楽しみにしております。


 5. くれはさま『英雄と乙女・その後』 異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075092303234

 災厄を鎮めた英雄ロシェとそれを支えた乙女アリア。二人は「夢渡り」という不思議な現象の中で出会い、そうして初めて出会ってお茶会を開いているようです。一体どんな災厄であったのか、どうやって二人がそれを阻止したのかについては二人の会話の断片から推測するより他ないのですが、これがもう本当にごく自然に語られていて、いや〜いいあそこ本当に手に汗握ったよね!? あの伏線も本当に見事でさあ……! という気持ちになってしまう見事な後日談でした。本編も楽しみにしております。


 6. いいの すけこ『人魚探偵は存在しない』 ミステリー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093074981843800

 血溜まりに沈んでいった村、惨劇を防げなかったという菱沼と、座敷牢にいたというヒトミ。じっとりとした雰囲気が昨今のホラーブームにぴったりがっちりマッチしていてこれだけでもうベストセラーの予感がしてしまいます。ヒトミさんと菱沼、生き残った二人が何を見、乗り越えてきたのか、そしてこれからどうなっていくのかがとても気になる雰囲気満載のエピローグでした。本編も楽しみです。


 7. ながるさま『いまさら素直になんて』 異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075096647806

 八年前に少女と共に自分の前から姿を消した親友との再会と、件の少女との不器用なやりとり。どうやら目がキーワードになっているらしい彼ら三人のそれぞれ、そして再会するまでの間に一体何があったのか、本編が大変気になります。個人的にはエラリオとレンの別ルートも気になりますね!(?)


 8. わたくしさま『帰郷』 異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075237558071

 草地の中にある石の前に跪き、過去を語る男性。迎えにくると約束した村で起こった災厄とはなんだったのか、これから彼にどんな運命が待っているのか。モノローグで紐解かれる過去、そこから垣間見える石化した人々の情景がまざまざと眼に浮かぶエピソードでした。大きな物語の始まりを感じさせてくれるお話、本編も楽しみです。


 9. しらすさま『ナスグの花咲く』 異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075327634323

 冬が終わり真っ白な花で埋め尽くされた恩人の故郷を訪れたヨル。オルフとの出会い、そしてその長い旅路の果ての別れ。リンリンと鳴るチョウや不思議な花が咲き乱れる風景描写がとても美しく、最後に置かれた木箱の中身も気になります。いったい二人に何があったのか、穏やかなエンディングとは対照的に決して安穏とはいかなかったようなロードムービーのような本編も楽しみです。


 10. ミドさま『ヴィイ-存在しないBLゲーム?に引きずり込まれる-』現代ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075232923376

 タイトルから近頃よく見かけるゲーム内転生ものかな? とやや警戒しながら読み始めたのですが、同人イベントから始まり、ボルシェビキを呼ばなくちゃ、で思わず笑ってしまって最後まで読んでしまう不思議な勢いのあるお話でした。作中作ならぬ作中ゲームを夢の中で詰めていくコンセプトもさることながら、作者さんがロシアやそのあたりの歴史にも造詣が深そうで、本編もとっても気になります。


 11. @sakamonoさま『イチカ』 現代ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075487305185

 見覚えのない物置小屋のような場所で目が覚めたイチカ。幼なじみのミノリと迷い込んできたコウに置いていかれた、と独白する彼女に何があったのか。人が冬眠するという世界観がとても気になるし、ヤマモモ酒とヤマモモにかぶりつく描写も大変素敵でした。冬眠をするという不思議な一族と迷い込んだコウとミノリとの間に何があったのか、謎が謎を呼ぶ本編も楽しみです。


 12. 宵宮祀花さま『二人のアレックスと傭兵団のクリスマス』SF

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075841345959

 多国籍なメンバーで構成される傭兵団の基地。隊長のアレクサンダーと副隊長のアレクサンドラ、次々と現れる何とも魅力的な団員たち。そのクリスマスパーティはこの傭兵団ならではのユニークなもので……。

 わいわいと楽しげに見える彼らですが、「戦火に沈んだ街路から回収した柊の枝」というその一文から、改めて傭兵としての厳しい生活が垣間見えました。魅力的な仲間たちとの絆など、本編がとっても気になるお話です。


 13. のゆさま『エピローグ:英雄サイラスの余生』異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075868664341

 内乱を終結に導いた英雄サイラス。才にも優れ容姿にも恵まれているのに、美しい王妹との婚姻も地位も顧みず、学生時代から親しかった恋人と僻地へと引っ込んだ彼の真意は……?

 苦手だからといって名前も覚えてもらえない同僚がやや不憫で笑ってしまうのですが、終盤で二人の思わぬ関係が明らかになり、一体どんな活躍をしていたのか改めて気になるエピローグです。仕込まれた言葉遊びも楽しい一作、本編も、そして新作の方も楽しみにしております。


 14. 綿野 明さま『くずれ桃のカミサマ』ホラー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093075926956557

 五年二組に転校してきた桃香。クラスメートから裏山に「マガツカミ」を見にいこうと誘われた彼女は、血を流している者は近づいてはいけないというその存在に一人で会うことになって……。

 桃香の視点で語られる情景は綺麗で穏やかなのに、浮かぶ映像が本当に怖くて、さらには少しずつずれていく桃香自身が何より怖いエピソードでした。わちゃわちゃ怪異バスターな本編も楽しみです。


 15. 結音(Yuine)さま『月下の桜』ホラー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093074716762867

 月下で白い花をつける桜の木の根元に穴を掘る男。それを見つめる少女。その穴を埋めた後には花は紅く染まったという。しっとりとした夜に包まれた幻想的でどこか淫靡なモノローグは断片的でありながら、これひとつでしっかりと完成した物語という印象を受ける美しい掌編でした。


 16. つるよしのさま『その戦役のあとのこと』SF

 https://kakuyomu.jp/works/16818093076160991047

 星間戦争が終わって半年。ライラーの勤めるバーに知り合いの青年レオンが訪れ、とある事実を告げたことから彼女の物語が本当の終わりへと動き出す。二十一歳というまだ若い二人と、そして激戦地へと消えたオスカー、アンドロイドであったルカとの間に何があったのか。レオン(報われない)に叱咤され、諦めきれずに旅立って大切なものを取り戻した彼女がそう決意するまでに何があったのか。本編がたいへん気になる切なくて温かいエピローグでした。


 17. 惣山沙樹さま『眠りにつくまで』SF

 https://kakuyomu.jp/works/16818093076196547035

 老人ホームでクララというアンドロイドに世話をされる主人公藤乃。同じような金髪碧眼のアンドロイドであったという伊吹との間には何があったのか。クララのアンドロイドとしての内実に心を揺らす彼女が、伊吹の笑顔を忘れがたいと思いながら、名づけたくないというその関係はどんなものであったのか。彼女の想いと伊吹と過ごした日々、その本編が気になります。


 18. 冴吹稔さま『純潔のパン屋と、逆行の魔女(エピローグのみ)』歴史・時代・伝記

 https://kakuyomu.jp/works/16818093076298823194

 清教徒革命の時代に転生してしまったらしいベアトリスとパン生地でもっちもちの美女を焼成してしまったパン屋のジェイムズの放浪譚のエピローグ。魔女狩りにクロムウェルにと史実との関わりが気になるキーワードが散りばめられた中、その身に新しい命を宿した彼女の前世が男だったなんて聞いてしまったら、二人の間にどんなやり取りがあったのか気になりすぎてしまいます。時代と性別を越えてしまったベアトリスの冒険の本編、楽しみにお待ちしております。


 19. ナナシマイさま『雨と獣は乾かない』異世界ファンタジー

 https://kakuyomu.jp/works/16818093076209756100

 髪が雷雨となるサシャナとその髪を使って雨を呼び寄せる雨乞いの巫女のルッタ。彼らと砂漠で出会ったのは「獣使い」と名乗るヘイジとアキト。魔物に囲まれた彼らは協力し合い、砂漠で不思議な技を披露します。個人的にはヘイジが炎を生み出し、アキトが煙草に移して煙を纏わせるところが大変好きでした。

 断片的にしか語られないのに、それぞれの特異な能力が鮮やかに描き出されていて、それぞれの物語が確かにそこにあると感じてしまうほどのしっかりとした世界観、本編も楽しみにしております。


 以上十九作、ざっとのご紹介となりましたが、どれも短いながらも物語の楽しさを感じさせてくれるエピソードとなっております。ぜひ皆さまもご覧の上、ワクワクしていただければ幸いです。


 改めまして、作者の皆さまにはご参加いただき、また読者として楽しんでいただいた方々もありがとうございました!


 次回、「二人のどちらかが運命を感じた瞬間が描かれたエピソード展覧会」(架空)でお会いしましょう。ではでは。

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