風土記系競作企画「調」に参加しました

 皆さんは「異世界風土記ふどき」という言葉をご存知でしょうか?


 私が初めてこの言葉を目にしたのは、くれはさんの作品『出来損ないの精霊の子』( https://kakuyomu.jp/works/1177354054935408770 )だった気がします。


 異世界で「風土記」。もうわくわくしちゃいますよね。以前、「祝」というテーマで開催された競作企画、今年は「調」というお題で開催されています。


【お題:調べ】

 とある土地について調べるために、使者が遣わされました。この使者の報告書、またはそれにまつわる物語を募集します。


 一見難しいお題にも見えますが、主催のヌーさんはとても柔軟な考えをお持ちのようで、企画概要をを見るととても緩やかなルールになっています。


 http://still-in-noise.a.la9.jp/fudoki/kikaku/2022_01_shirabe/kikaku.html#gaiyou


【報告書について】

 ・書式不問

 ・未完成(草案、まとめる前のメモ、日記等)でもOK

 ・全文でなく抜粋でもOK

 ・本文が出てこなくてもOK


 などなど。


 本文が出てこなくてもよいし未完成でもいい、というのはとても心強いですよね。

 文字数は一万字以下(下限なし)、最終締切日の2022/12/17(土)までに応募フォームから応募すれば参加できますので、気になる方はぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。


 さて、ここからは今回私が参加させていただいた作品のあとがきというか裏話というか言い訳というかそんなことをつらつらと。多分にネタバレを含みますので、未読の方は、できれば本編をお読みになってから先に進んでいただけると嬉しいです。


『北の深淵、その最奥に眠るもの』

 https://kakuyomu.jp/works/16817139555327180169


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 もしかしたらタイトルでピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは、既存作、


『Somewhere, Nowhere 〜ここではないどこかへ〜』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054921268914


『ここではない、どこかへ』(改稿版)

 https://kakuyomu.jp/works/16816452220673954718


 と同じ世界が舞台になっています。上記の物語から遡ることおよそ三百年。かつての大戦の爪痕がまだ生々しい時代のお話です。


 今回は調査のために遣わされた「使者の報告書」にまつわる物語、ということで調査ならあの大穴だよなあというふわっとした感じで書き始めました。何しろ今回は企画を知ってから、実際に作品を公開するまで半年近い時間があったので、だいぶゆっくりと行ったり来たりを繰り返しながら書いていました。


 当初は主人公は使者、その相棒となるのは上記作品の重要人物の一人、薬師のロイの予定でした。けれど、書いているうちにせっかく報告書にまつわる、というお題があるのだから、それを活かした物語にしてみたいな、とふと思いつきました。


 文字数の上限が一万字なので、あまり何もかも詰め込みすぎると大きくはみ出してしまいます。そこで主催のヌーさんの「未完成でもOK」というお言葉に甘えて、あえて物語は途切れて、隠されていた真実(誤解)が第二の報告書で明らかになる形式にしました。

 看板画像や第一話で報告書の一部を開示し、第二話、物語の冒頭が報告書と重なるようにしたのも、物語の視点主が使者である、という(誤った)印象づけをしたかったからです。

 それでも一応、主人公の言葉の端々から違和感を覚えるようにはちりばめたつもりなのですが、伝わっていたでしょうか。


 Web小説はライトに一度読んだらおしまい、という傾向が強いような気がしますが、今回は二つ目の報告書でひっくり返すことで、最初から読み直した、というお声をいただけてにんまりしています。


 いずれにしても大きな物語の一部のようになってしまったので、ちょっと不親切だったかなと思いつつ、おおらかな企画に甘えてとても楽しく書くことができました。


 今回入り切らなかった設定を少しだけ。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


【精霊の四氏族】

・炎のアルディオス:魔法陣や魔法薬を作り出すことに長けている。研究バカが多い。

・風のヴィンダ:織物や細工品が得意。あまり物事にとらわれない自由人が多い。

・水のヴァルタス:彫刻や農耕に優れる。内気な人が多く、深い森に囲まれた湖の集落からほとんど出てくることがない。

・大地のヨルヌス:鍛治や金属工芸に優れる。脳筋傾向。


 それぞれの精霊は人間とよく似た容貌をしているが、寿命が長く、また人間とは違う考え方を持っていることが多い。特に長は強大な力を持っているが、大体変わり者でかつ一般人からすると、だいぶ傍迷惑な人だったりする。


【ダレンアールの人々】

 人間に近いけど、人間よりは精霊にちょっと近い人々。長寿で百五十年から長いと二、三百年生きる人もいる。成人するまでは普通の人間と同じように成長し、その後は本人の意識次第で容姿の成長が止まる。


 時折、未来や過去などを視たり、普段は聞こえない精霊や妖精の声を聴くことのできる魔力を持つ者が現れる。

 ラグナの兄は前者、ラグナは後者の設定だったのですが、そういえば説明を忘れましたね……。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 今回、この企画で改めて「自分が好きな世界を自分好みに作り上げて物語にする」という原点に立ち戻れて、とても楽しかったです。もちろん、読み手を意識して書くことが大切なのはいうまでもないことですが、ファンタジーの世界を楽しむことを前提に、読み手もそれを期待してくださる、というのはすごくよかったなあと。


 改めまして、素敵な企画をありがとうございました。


 そして、読んでいただいた皆さまもありがとうございます。他の参加作品もどれも作者さんたちの中に深く広く広がる世界がとても楽しいので、お時間あるときにでも覗いてみてはいかがでしょうか。


 http://still-in-noise.a.la9.jp/fudoki/kikaku/2022_01_shirabe/list.html


 普段なかなか出会うことのない、とてもユニークな世界に出会えること間違いなしです。

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