飛ぶこと、溺れること  - ろーぷれ日記の主人公の独白 -

みなはら

第1話 飛ぶこと、溺れること  - ろーぷれ日記の主人公の独白 -


目的もなく飛び続けることは、溺れていることに似ている。


あいつはそんなことを語っていたけれど、元気だろうか…。




飛び続けるためには目的がいる。


もちろん、最初に飛び立つためにだって目的が必要だ。


けれども、

飛び立つために、勢いをつけるかのように発した力と、

飛び続けるために、胸の内に秘めたもの。


その力は、やはり何かが違っているように感じるのだ。



初めの想いはきっと同じはずだ。


それがどこからかで、飛び上がる力と飛び続ける力とへ、分かれてゆくのかもしれないと感じている。



飛び続けるには、想いを絶やさないことが必要なのだ。

おそらく、あいつはそんなことを言いたかったのだろう。



想いが絶えて、目的も無く、ただ飛んでいること。


それは、あいつにはとても不幸なことで、

だから、そのことを水の中でもがく様に例え、溺れると表現したのだろうと思う。



想いには、情熱や夢には限りが無い。そう信じているつもりでいる。


けれども、想いを持続させ、情熱や夢を持ち続けるには、努力がいるのだろう。


初めて胸に宿った想いの熱を絶やさずに進むために、想いをいだいて飛ぶために努力を重ねる。


何もかも、

本当に何もかもつぎ込んで、初めの想いのための情熱を燃やし続ける。



あの頃のあいつを思うと、冷えかけた胸に熱が宿ることがわかる。



それほどに、

情熱を燃やしながら飛んでいたあいつだった。





魚は泳ぎを教わることなく泳ぐそうだが、本当だろうか。



少なくとも、鳥は飛ぶ努力をして飛んでいるのだと思う。


鳥は飛ぶことに目的を持っている。

飛ぶという目的がなくなった鳥は、地上へ降りて飛ぶことを忘れるからだ。



ドードー、モア、タカヘ、キーウィ、ペンギン。←もう居ない、オオウミガラスという名のペンギンだ。


その鳥たちは危険の無い地へと空から降りて、飛ぶ力を捨てた。

そして、あるものは飛ぶ以外の力を得た。



鳥たちのように、

人も飛び続ける情熱を燃やしながら生きるのが出来なくなった時、

ただ想いを捨てるのではなく、初めの想いと違うものを得て、

そして、進み続けるのかもしれない。






あいつは今も飛んでいるだろうか。


地上に降りてしまっていないだろうか。




まだ、目的を持たないで飛んでいるというのなら、

それは溺れているのとは、決して似て居ないと言おう。



それは、飛ぶことこそが、意味があることなのだと、

飛ぶために、お前は飛んでいたのだと、

あの頃のお前は、そうだったのだと。


あいつのしていたことは、もがいて溺れていたのではないのだと。



あの頃、応えられなかった言葉を、

あいつへと伝えよう。







それに、


どうせ溺れるのなら、

おれは、夢や情熱に溺れたい。



今度、あいつに逢えたら、そう言ってやろう。











まだ、そうして生きていると……




















蛇足です。



 この言葉は作者自身の言葉でもありますが、拙作の物語の主人公の想いから出た言葉でもあります。


 ですから、この独白はフィクションです(苦笑)



 でもとりあえず、この文章を、生きるのに一生懸命だったあの人と、

あいつへ。

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飛ぶこと、溺れること  - ろーぷれ日記の主人公の独白 - みなはら @minahara

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