22杯目 マンデリンとしろっぷ。
彼が風邪を引いた。
「うーん……参ったなぁ……」
彼は寝室のベッドで横になりながらそんなことを呟く。彼が風邪をひくのは珍しい、というか私と付き合ってから初めて風邪をひいた。
「大丈夫? お粥とか作ろうか?」
「いや、珈琲がいいな」
「なんで!?」
「カフェインは解熱作用、代謝の促進を期待できるんだよ……」
彼は具合悪そうな声でそう話す。知らなかった。
できるだけ彼の意向に沿おうと、私は急いで珈琲の準備を始めた。
「凛ちゃん」
「どうしたの? 具合悪い?」
「いや、具合悪いのはまぁ仕方ないんだけどさ……」
彼は私を指さした。
「なんでわざわざここでドリップしてるのかな……?」
彼は屋外イベント用の珈琲セット一式を使い、寝室でお湯が沸くのを待っていた時彼が声を掛けてきた。
「えっ、あっ、目を離すのが心配だから……」
「風邪くらいで死なないから……」
「隼人君がひく風邪は死ぬかもしれないでしょ!」
「どんな風邪……?」
私はいいからいいから、と少し起き上がろうとしていた彼を再び寝かせてドリップを始める。
「あ、珈琲の良い匂いがするね」
彼がいつもより少し弱々しい声で呟く。
「でしょ〜、もう少しだから待っててね」
私は素早くドリップを終えて彼の元に珈琲を運ぶ。
「お待たせしました。マンデリンです」
「ありがとう、頂きます」
彼はいつもより若干ゆっくりと珈琲を飲む。
「うん、美味しいね。柔らかい苦味と上品なコクが飲んでて落ちつ……く……」
「隼人くん!?」
そう言って感想を言い終わる前に彼はまた寝込んでしまった。
その後、もう一日会社を休んで彼は完全復活した。
「うーん、凛ちゃんには迷惑かけたね」
「え、何かされたっけ?」
私が頑張って思い出そうとしてると、彼が話す。
「2日間も寝込んで看病までしてもらって、ごめんね」
彼がそう言って頭を少し下げるので私はその下がった頭を優しく撫でる。
「隼人くん隼人くん、それは彼女として当然の事ですよ、あと私はごめんなさいよりありがとうの方が嬉しいぞっ」
私がそう言って笑うと彼も私を見て笑っていた。
「あはは、そうだね。凛ちゃん、ありがとう」
私は彼のその言葉に大きく頷く。
「うん!」
「じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい!」
そうして彼は会社に出勤して行った。
私は私にとって初めての彼の風邪が治ってやっと一安心して深呼吸をする。
「ふぅ……安心したらなんだか疲れたなあ……」
私はそう呟いてソファに座ると身体が寒かったり暑かったりする感覚に襲われる。
「あっ、やばい……これって……」
まさか、と思ってテーブルの上に置いてある体温計を手に取り熱を測る。
「38.2……」
私は体温計に表示されてる温度を見た瞬間具合がとたんに悪くなりそのまま寝てしまった。
「風邪、移しちゃったね」
「はやとくんごめんなさ〜〜い……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜今日の珈琲〜
マンデリン(中深)
苦味 ☆☆☆☆
酸味 ☆☆
甘味 ☆☆
コク ☆☆☆☆
香り☆☆☆
・インドネシア産の珈琲
・柔らかな苦味と農耕なコクが特徴。
・他の豆より性質が焙煎度によって変化しやすい。
・日本ではそこそこ人気の高い豆のひとつ。
珈琲としろっぷ。 Ai_ne @ai_ne_kakuyo25
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