21杯目 エメラルドマウンテンとしろっぷ。

私は今日とても気分が良くキッチンに立っていた。


「凛ちゃん今日はご機嫌だね、いい事あったの?」


彼も私のあからさまな機嫌の良さに気づいたようで、そう聞いてきてくれた。


「そうなのです! みてみて!」


私は大きめのマイバッグから中くらいの大きさのダンボールを取り出す。


「ダンボール?」


「ダンボールです」


「ダンボールだね?」


私はそのダンボールにしてある封を開けて中身を取り出す。


「じゃーん!」


「これはコーヒーケトル……に台座がついてるね」


「そうです! これは私がずっと欲しかった温度調節付きケトルなのです!」


「今まで持ってなかったんだ?」


「うん……私のこだわりでメーカーをHARIOに揃えてるばかりにこれもHARIOで揃えたくて……1万5000円もしたんですごめんなさい」


私はそう言って1万5000円を使ってしまったことを後になって謝る。ほんとうに申し訳ない。


「あはは、そこまで大きい額でもないから気にしなくて全然良いんだけど……でもこれで美味しい珈琲が飲めるね」


彼はそう言って笑って快く許してくれた。優しい。


「じゃあその進化したケトルで今日はどんなコーヒーを淹れてくれるのかな」


「今日は有名どころのエメラルドマウンテンです」


「エメマンは結構有名だよね」


「そうそう、缶コーヒーとかでも良く使われてる豆だけど、実際はコロンビア産珈琲豆の3%程度しかエメラルドマウンテンの名前を名乗れないんだよ」


そう話しながら私は新しいケトルを使いお湯を沸かす。1度単位でお湯の温度を調節できる魔法のような道具だ。


私は温度を85℃にセットしてお湯が沸いてからドリップを始める。手動でこの調節をするのが多分珈琲淹れる中で1番慣れが必要な上に面倒なので困っていたのだった。


私は彼の前に完成した珈琲を差し出す。


「どうぞ、エメラルドマウンテンです」


「ありがとう、いただきます」


彼は珈琲を口に入れて満足そうな顔をする。


「うん、美味しいね! 凄く芳醇な香りで苦味とコクもしっかりある、高級感のある珈琲だね」


「うん! でも高級品の中でも値段はそれほど高くないから買い揃えやすいんだ!」


「なるほどね、でも味があんまり変わった気がしないんだけどこれは僕の味覚の問題かな……」


不安そう顔をする彼。しかし、当然である。


「多分大丈夫! 今までは私が手動で調整してたのを自動に変えただけなので!」


「流石凛ちゃんだね」


彼はそう言って笑っていた。





しかしまぁこのケトルが便利すぎて手動で調整することが出来なくなりそうである。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜今日の珈琲〜


エメラルドマウンテン(中深煎り)

苦味 ☆☆☆

酸味 ☆☆

甘味 ☆☆☆

コク ☆☆☆

香り ☆☆☆☆


・香り高くコクの強い珈琲

・エメラルドマウンテンという名前の珈琲豆はコロンビア産の中でも3%に満たない。

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