第26話

次の日は水曜日だから学校は休みではない。学校に行くことは行ったが、三人の気持ちは勉強どころではない。杏里もいずみもさゆりも誰もがロンリーのことを気にかけている。学校に来る前に牧場に寄りたかったが、遅刻したら先生に怒られるから、仕方なく学校に来たのである。

 早く授業が終わらないかな・・・そんなことばかり考えていたが、こんな気持ち

の時にはなかなか時間が経たない。

 「終わった」

 実に長い時間だった。杏里はよく我慢出来たものだと愚痴をいった。

杏里がまず教室を飛び出し、さゆり、いずみが彼女の後を追った。

向かう場所は三人で相談する必要はなく、急いで牧場に向かった。もちろん、ロンリーが帰って来ているのか気になっていたからである。

 途中、三人は・・・というより、杏里は一人の女の人とすれ違った。その瞬間、

杏里は首を傾げ、もう一度振り返った。

 (誰だろう・・・?)

 杏里にはそんな感じの印象だった。でも、何かしら不安のような気持ちに襲われ

たのである。この時にはもちろんその不安が何なのか、杏里には分からないし、深

く考える気持ちもなかった。

「杏里、どうしたの?」

 さゆりが立ち尽くす杏里に声を掛けて来た。

 「何でもないよ」

 と、返事をし、杏里はまた牧場に急いだ。

 牧場に着くと、

「大丈夫だよ。ロンリーは夜遅くなって戻って来たんだよ」

 イザルお祖父さんはニコニコしていた。子供たちが来てくれたことが余程嬉しい

のだろう。

 羊たちがいる納屋に、三人は向かうのではなく、納屋の横にある大きな木・・・

樟の木の下に行くと、やはりロンリーはいた。ところが、まず目にしたのは、この

島では見慣れない動物がいたのである。

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杏里という少女 青 劉一郎 (あい ころいちろう) @colog

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