第25話
柵の手前でロンリーは飛び回るのに疲れたのか、立ち止まっていた。その内、
ロンリーはキョロキョロして、何かを探しているように見えた。そして、ロン
リーは急に走り出し、壊れた柵から逃げ出して、オンコの森の方に走って行ってし
まった。
三人は懸命に追い掛けるが、オンコの森に入った所で見失ってしまった。
「ロンリー」
いずみは今にも泣きだしそうだ。
「何処へ行ったのかしら?」
杏里は凄く心配で、彼女も今にも泣きだしてしまいそうに見えた。
「杏里、もう暗くなったから、とにかく家に帰ろうよ」
さゆりは杏里を抱き寄せた。
「そうだよ、今日の所は、帰ろう」
さゆりは杏里の肩を叩いた。
ロンリーは日が暮れても見つからなかった。
おじいさんに相談すると、お腹が空けばその内帰って来るよ、といい、三人を慰
めてくれた。
「心配しないで、今日はもう家にお帰り・・・」
とイザルお祖父さんは、三人を何度も励ました。
杏里は家に帰った。そんな元気のない杏里をみさ江は珍しく心配していた。
「どうしたかね?」
与太郎は首を振った。二人には子供はいなかった。一人、娘がいた。それが、杏
里の母なのである。大事に育てたのだが、うまく育てられなかった・・・という後
悔が二人にはあった。だから、孫の杏里だけは大切に育てなくてはいけないと二人
して決めていたのだ。
「杏里、今日はもう寝なさい」
と、みさ江がいうと、肩を落としたまま二階に上がって行った。
ベッドの入った杏里は、
「でも、ロンリーは何処へ行ったんだろう?何かを探しているような素振りをし
ていたようだけど・・・」
杏里にはどれだけ考えても、ロンリーの気持ちが分からなかった。何を探してい
たのか、そして、何処へ行ってしまったのか・・・杏里の目にはいつの間にか涙が
こぼれていた。
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