2話 そうだ商人になろう!



 結論から言うと、本当に瞬殺できた。

相手のレベル10程度―――ギルドではD級ぐらいの実力―—だが、試しにステータスから技能のMA+キックを選択したら「ダイスロールで振りますか?」と出たので使ってみたら頭の中にカラカラとダイスが転がったような音が響いて


MA+キック100➔ 90成功


2d6➔8


 こんな感じでログに表示された。相手は俺のことを舐めていて俺に先攻を譲ったので遠慮なく実験……ゴホンッ、検証に付き合ってもらおう。ということで、とりあえず技能通りにキックをするため走って接近するが、その時に出た速度にも驚いた。

 とはいえ、意識が追い付かないわけではないのでそのままの勢いで回し蹴りを喰らわせる。……いや、本当はただの前蹴りをするつもりだったのが、なぜか体が勝手に動いた。そのおかげ?せい?でかなりの威力になったみたいだ。

 たぶん、ダメージダイスロールで出た目の威力になっているのと技能MA+キック100と高ステータスが原因だろう。

 その結果、俺の蹴りは相手の胸部にあたり、装備ごと陥没して、さらに後ろに吹っ飛び、壁にめり込んだ。

 周りは唖然としていた……


 ―――俺も含めて……


 とりあえず、我に返った審判が俺の勝ちを宣言して慌てて救護班を呼んだ。周りで観戦していた人たちは一瞬後に沸いた。

 俺はそれらを見ながら思った……

 ―――これ、やりすぎたよね。……うん、明日からどうしよう。






「はあ、つかれた……」


 あの後、いろいろ聞かれたり、勧誘されたりで、もみくちゃにされて大変だった。とりあえず、休みたかったので俺の登録を担当してくれた受付嬢の人におすすめの宿を聞いて、向かった。

 ほかの人は解散してもらって俺は宿の一人部屋一日を銅貨十枚でとった。そのまま、部屋に直行し、そのままベッドへダイブ。


 ―――あ~本っ当に疲れた。申し訳ないが、戦闘がではなく、そのあとの対応で、だ


 ただ、ステータスを上げたから肉体的にも精神的にも疲れにくいはずだが、なんか……疲れた。質問の中には強さに関してのことがほとんどだったので「運が良かっただけですよ」とか「無我夢中で覚えてません」などでごまかせたと思う。……多分。


 それから、さっきログをチラ見したのだが、すごいことになってた。


▷技能「MA」に能力が追加した

▷技能「キック」に能力が追加した

▷技能「説得」を取得した

▷技能「いいくるめ」を取得した

▷技能「言語」に能力が追加した

      ┆


 ってな感じでいろいろ増えてるし、俺が現在習得している技能をタップすると能力という別のウィンドウが出た。そこにはTRPGでは見たことがない名前の技能がある。これはどちらかというとテレビゲームのRPGに出てくるような名前なのでスキルではないかと思う。


 推測だが、技能はスキルの上位互換みたいなものじゃないか?技能の中に生えてるし……とりあえず、さっき手に入れた技能をすべてMAXにする。しかし、ここまでポイント使っても全然減らないな。

 まあ、減ってもその技能のレベル?達成値?を下げればポイントも戻るみたいだけど……

 さて、このまま寝てもいいが、さすがに飯なしはきついので起きて一階に降りて宿についてる食堂で食事にした。料理に関しては牛に似た動物のサイコロステーキと塩味のくず野菜スープと硬くて黒いパンのメニューだった。


 異世界の料理はまずいし、味が薄いといわれているが、肉は普通にうまいし、スープも薄味だが、コクがあっていい。パンは硬くて味がないが、かみ砕けないほどじゃないし、スープに浸して食べるとちょうどいい硬さになる。


 ふう、うまかった……ついおかわりをしてしまった。値段は銅貨二枚と安いし、おかわりも銅貨一枚でできる。

 ついでに言うとこの世界のお金は鉄貨が百円、銅貨が千円、銀貨が一万、白銀貨が百万、金貨が千万、白金貨が一億相当あると城にいるときに聞いた。持ってる人がほとんどいない王金貨というものがあってそれは値段がつけられないほど価値が高いそうだ。


 まあそれは置いといて、さすがに眠くなってきたな。これからのことは明日考えるか。二階の自分の部屋に行ってベッドに入って寝た。






 おはようございます、異世界生活二日目です。ですが、昨日さっそく失敗した。ある程度弱いアピールするつもりだったのに……どうしたものかと悩んだが、思いついたことがある。


「冒険者がだめなら、商人になろう」


 幸いと言っていいかわからないが、この世界に――というかこの国?街?には――商人ギルドの様なものはないようだ。要するに勝手に商人を名乗っても何の問題もない。


 今朝、街の露店で朝食代わりの買い食いをしながらついでに情報を集めてみた結果こういう話を聞いた。それじゃあさっそく準備をと思ったが、仕入れのための金があんまりない。


 まず金策から始めないと……一応そっちの情報も集めようとまた外出する。昼食ついでに酒場で食べながら情報収集しようとおすすめの酒場に行った。昼間なのに結構混んでて、しかも、店内はすでにアルコールの匂いで充満している。


 ―――昼間っから飲んでんのかっ!


 とかツッコんでる場合じゃない。とりあえず、適当な席に着く。店員を呼び、おすすめの品を聞いてそれにする。だってこっちの食材の名前とかしらん。技能はあるので文字は読めるが、メニューにはゲイグとかリュリュとか聞いたことない単語が入ってるのでどんな料理が来るかわからない。


 いま気づいたが、朝の情報収集の時に調べておけばよかった……。だが、おすすめに基本外れはないはず。はじめに頼んだ果実水がすぐにきた。普通に冷たいしうまい。安いとこは冷たくないらしい。


 しばらくして料理が来たのでこっそりといただきますをする。じゃあ、さっそく食べながらできるだけ耳を傾けることに集中しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界は狂想曲のようだった 狂歌殺鬼 @kyoukasatuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ