第30話呉服
経丸達は金崎の居城春日山城に無事着いた。
金崎の居城春日山城は大きな山を丸ごと城にしておりこの国一の大きさの山城である。
難攻不落無敵の城に見えるがしかし弱点がひとつある。冬は豪雪によって身動きがとれなくなる城なのである。そのため金崎軍は冬の間は全く戦ができなくなるのである。
経丸達を見つけた門番のいかつい男は経丸達に向かって
「お主達、何者だ」
「この城の城主金崎様に用事がある天羽経丸です」
門番は経丸の言葉を聞いてガラリと態度を変えて
「天羽様でしたか、これは失礼しました。ただいまご案内させていただきます」
経丸達は城の中を通された。
門番は金崎の部屋の前まで経丸達を案内し
「ここでございます、では私はここで」
「ありがとうございます」
経丸達は丁寧に門番に頭を下げた。
経丸は
うわぁ緊張するなぁ、こういうの初めてだからなぁ
経丸は緊張しながら震える手で戸を開けた。
「失礼します」
「おっ久しぶりですね経丸さん、士郎君」
経丸と士郎は金崎の顔を見て昔の記憶が一瞬でよみがえり士郎は興奮気味に
「先生、先生じゃないですか?」
「士郎君あいかわらず元気そうで」
経丸は士郎と対照的に
「お久しぶりです、先生」
金崎は笑顔で
「二人とも立派になって」
士郎と経丸は金崎の言葉が嬉しく自然と笑顔になっていた。
士郎は手をあげて
「先生、ずっと名前教えてくれなかったから金崎が先生ってわからなかったよ」
「あの時は城主を放棄して逃げ出してたから名前は教えられなかったんですよ」
「そうだったんですか」
「しかし、二人がこんなに立派になって驚きましたよ」
士郎はツッコむように
「いや、先生がこの国一、二を争う大大名だったことの方が驚きですよしかもおなごなのに凄すぎます」
「いや、そんなすごい事ではないですよ。それより経丸さんも立派な城主になられて私凄く嬉しいです」
経丸は尊敬する金崎に言われて嬉しくなり思いが少し溢れ出てしまい大きな声で
「ありがとうございます」
「うるっさ!」
経丸は士郎を睨みつけ小さな声で
「余計な事言うと殺すよ」
士郎は経丸の殺気に怯え小さい声で
「すみませんでした」
金崎は経丸達にお茶を出して一息ついた後
「じゃあ、さっそく同盟を結んで町を案内させていただきます」
経丸はビックリした感じで
「同盟を結んでくださるのですか?」
金崎は優しく微笑みながら
「私と経丸さんの仲ですから」
「ありがとうございます」
そして経丸は献上品を渡し金崎はお礼の品を渡して同盟は結ばれた。
金崎に連れられて経丸達は城を出た。
「金崎殿、どこへ連れて行ってくださるのですか?」
「経丸さん達服に興味ありますよね?」
士郎以外の皆は目を輝かせながら
「はい、あります」
「それはよかったです、この近くにいい服を揃えている呉服屋がありますので今からそこへ行こうかと」
士郎以外は「やったー‼」と喜ぶ服に興味のない士郎はあまり喜ばないその様子を見ていた金崎は
「士郎君ごめんね、少し付き合ってね」
「しかたない、帰りに旨い物食べさせてね」
経丸は慌てて
「士郎!図々しいこと言わない‼」
金崎は微笑みながら
「いいんですよ、美味しい物食べに行きましょう」
「さすが先生、話がわかるこれが大名の器か。経丸しっかり先生を見習えよ」
経丸は低い声で
「士郎に言われなくてもわかってるわ」
二人のやり取りを見た金崎は上品に少し笑いながら小さい声で
「二人とも幼い頃から変わらないですね」
士郎と経丸は声を揃えて
「何か言いましたか!」
「何も言ってないですよ」
経丸達は呉服屋についた。
経丸達は呉服屋に入るとそこには凄い数の服が置いてあった。
あまりの数の多さに経丸は
「うわぁー凄い数!」
金崎は優しい笑顔で
「皆さん欲しいものがあったら私達に遠慮なく言ってください」
経丸は慌てて
「それは悪いですよ」
「遠慮しなくて大丈夫ですよ、私から見たら経丸さん達は娘みたいなんですから」
「しかし」
戸惑う経丸の横で
「先生、ありがとうございます早速服を見て回ります」
経丸は強い口調で
「ちょっと、士郎図々しいでしょ」
士郎はドヤ顔で
「図々しいのはそれがしの専売特許だ」
「経丸さん達選んできな」
経丸と凛とひのは声を揃えて
「すみません、ありがとうございます」
経丸達はウキウキしながら服を見て回った。
士郎は退屈で大あくびしながら椅子に腰をかけていた。
ひのは少し派手めの赤色の主張が強い服を持って
これは私には少し派手かなぁ、でもちょっと着てみようかなぁ
凛はひのの後ろから
「あっ、ひのちゃんいいじゃんそれ」
「そう?」
「似合ってるよ」
「いやちょっと着てみただけだよ」
「いやわかるよ、私も女の子だから変身してみたい気持ちわかるわかる」
「いや、そんなつもりじゃ」
ひのは顔を赤くした。
「凛ちゃんちょっと来てください」
「どうしたんです、殿」
経丸はアジサイの刺繡が入った黄色と赤の二つの服を持ち
「色を黄色と赤で迷っているんですがどちらがいいと思いますか?」
凛は即答で
「黄色がよろしいかと」
「なんで?」
「兄貴が好きな色だからです」
経丸の顔が真っ赤になった。
「殿、その黄色に着替えて少し待っていてください」
凛はそういうと走り出した。
凛は士郎の右腕を乱暴に引っ張り
「兄貴、兄貴」
士郎はけだるそうに
「なんだよ」
「ちょっときて」
士郎は渋々凛に付いて行った。
凛が士郎を案内したところには新しい黄色の着物に着替えた経丸の姿があった。
「ねぇ、この殿の格好どう思う?」
経丸は顔を真っ赤にして
「凛ちゃん‼」
士郎はどもりながら心の声が漏れるように
「おっ、経丸可愛いんじゃないか」
士郎の意外な言葉に経丸は戸惑うように
「えっ?」
「えっ、ってなんだよ」
「さっきなんて言ったの?」
「二回も同じこと言わないよ」
凛はニヤニヤしながら
「兄貴、経丸さんの事可愛いって言ったよね」
士郎は少し大きな声で
「バカ、余計な事言うな」
経丸は士郎を茶化すように
「士郎が私の事可愛いってお世辞言うなんて」
士郎は小さい声で
「バーカ、それがしはお世辞なんか大っ嫌いなんだよ」
経丸は呟くように
「えっ?」
「なんでもないよ」
そう言ってそっぽを向いたのだった。
なんだかんだで皆服が決まった。
経丸と凛とひのは声を揃えて
「金崎様、ありがとうございました」
深々と頭を下げた。
金崎は優しい表情で
「皆、可愛くなって良かったですね」
経丸達は少し照れた。
「士郎君は本当に服よかったの?」
「まぁ、それがしは服の代わりにめちゃくちゃ旨いおにぎりおごってもらうから」
金崎は少しビックリしながら
「おにぎり?もっと贅沢なものでもいいんですよ」
「それがし、おにぎり好きなんですよそれにこの世で一番おにぎりが似合う男って言われてますから」
経丸はツッコむように
「誰が言ってんだよ」
「今はそれがしだけだけどそのうち日ノ本中で言われるようになるわ」
経丸はツッコむように
「言われるか‼」
皆笑ったのであった。
「経丸さん、これからもよろしくお願いします」
金崎は経丸に頭を下げた。
経丸は慌てて
「こちらこそよろしくお願いします」
これにて天羽家は無事金崎家と同盟を結べたのであった。
ライトノベルターニングポイント @ktkmba1006
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