たとえ、ほろ苦い土を噛んだとしても

「正直者がね、結局は馬鹿を見るのよ」

 ある日、いつだったか。
 誰かが小鼻を膨らませながらこう言った。

 確かにそうかもしれない。

 搾取されるのはいつも正直者。
 弱肉強食。
 戦は計略謀略の連続。
 更に言えば、ここみたいに上下関係がキツければキツいほど、その傾向は強くなる。
 そうね。きっと貴女の言うとおり。

 ――でも。

 でも私は知っている。



「ありがとう」



 あなたがくれた、その言葉。
 その一言が全てを物語っている。

 * * *

 これはちょっと不幸な琴子のほろ苦い日記。

「働き方改革」が声高に叫ばれている現代日本に今だ残っている様々な問題を、時に耐えつつ、時に涙を飲みつつ日々生き抜いていく彼女。
 この作品で特にきらりと光るのはそんな彼女が持つ「優しさ」と言っても過言ではないでしょう。

 どんな逆境にあってもずっと失わずに持ち続けた優しさ。
 立場逆転のチャンスが巡ってきてもなびかない強さ。
 常に誰かに寄り添い続ける温かさ。

 そんな真似できそうで真似できない彼女だけの「星」はある日巡り巡って――



 ――さて、どうなるでしょう?
 それは是非皆様ご自身で頁をめくり、お確かめ頂ければと思います。


 夜空に浮かぶ星々。
 地上から見るとぽつんと、どこか頼りない輝きだけど、

 近くでよくよく見てみると初めてその神々しさ、美しさに気がつくもの。

 その意味に、彼女と近づく物語。