第5話

 目が覚めるとそこは自分のベッドの上だった。


 やけにリアルな夢を見た。口裂け女に襲われて、かと思ったら彼女の天花が俺のことを助けてくれた。なんて猟奇的な夢を見ているんだ。



「あー、もう、朝から目覚め悪いわー」



 テンションだだ下がりで顔を洗い、リビングにむかう。



「おはよう真白。朝ごはんできてるから食べちゃいなさい」


「母さんおはよう。いただきます」


「あ、真白、おはよー!寝起きの真白ってテンション低いんだね」


「おはよう天花。まあ今日は特に低い⋯⋯なんで天花が俺の家に!!?」


「何言ってるの、昨日公園で寝てたあなたを天花ちゃんが連れて帰ってきてくれたのよ?」


「いや、はあ?まじで?」


「そうだよ真白!ひどいなー!ここまで運ぶの苦労したんだよ!」


「いや、それはまじでごめん。ありがとうございます」


「どういたしまして!ほら早く食べて学校行くよ!」


「お、おう。ちょっと待ってて」


 釈然としない気持ちで朝ごはんを食べ支度をして家を出た。出る時に母さんがやけにいい笑顔を俺に向けていたのに無性に腹が立ったが、あまり気にしないことにしておこう。



「なあ天花、昨日ってなんでこんな所にいたんだ?」


「ああ、昨日はちょっとした用事があってあそこの公園の近くにいたんだよ。それで、たまたま中を見たら真白がいたから脅かそうとしたら気持ちよさそうに寝てて。それで前に聞いた住所を頼りにお家まで連れて帰ったの」


「そういうことか。まじでありがとな」 


「ふふ、どういたしまして!」


「いやー、昨日辺な夢見ちゃったから、てっきり真冬が俺のことつけてるのかと思っちゃったよ」


「変な夢?」


「そう、夢で起きて公園から帰ってる途中にちょうどこの辺りで口裂け女っていうの?そういうのに襲われてさ。それで殺されそうになってた所に着物着た天花が来て俺のこと助けてくれたのよ。おかしな夢だよなー。ただ、リアルすぎて現実かと思っちゃったわ」



 苦笑気味に昨日見た夢を天花に話した。



「ふーーん、覚えてたんだ」


「天花?」



 ふいに天花の雰囲気が変わった。まるで昨日見た夢に出てきた天花のように冷たい目でこちらを見つめてくる。



「ねえ、私を見たときすごく寒い風が吹いてなかった?⋯⋯こんな感じに」



 天花がそう言った瞬間、昨日と同じように春に吹く風にしてはあまりにも寒すぎる風が吹いた。



「天花?え、どうなってるの?意味がわかんないんだけど」



「ふふふ、覚えてるんなら誤魔化してもしょうがないよね。⋯⋯真白⋯⋯雪女って知ってる?」


「え、雪女?それって、昔話とかに出てくるやつでしょ?それと、今の状況がどう関係あるんだよ」


「⋯⋯真白、私はね、雪女なんだよ」



 自分の彼女にいうセリフではないのを承知で言わせていただきたい。


 いったいこいつは何を言ってるんだ??

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風花さんは今日も冷たい りんごす @applevinegar

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