第3話②
「よし、帰るか!」
「ねえ」
「ん?なんだよ」
「もふけが入りたそうにしてるじゃんか!行こうよ!」
「やだよ。あそこはやべえ爺さんがやってるって噂だぞ?やめとけよ」
「でももふけがしゅんとしちゃったよ?」
「きゅー……」
「ぐっ……」
早々に帰ろうとする橋本とやばい店へ行こうとするもふけと翔太。少し翔太が親バカな部分もあるが、橋本ももふけのかわいさに堪らず唸ってしまう。
少し考えたあと、
「……行くか」
「やった!よかったねもふけ!」
「きゅい!」
橋本も、もふけには勝てなかった。
「よし、入るぞ」
「うん」
「きゅきゅ!」
もふけは随分と乗り気なようだ。
遠巻きに見るやばい店も中々だったが、いざ店の前に立ってみると雰囲気が明らかに違った。瓦屋根の一軒家で、入り口上には「
ガラガラガラという音を立てて引き戸が引かれる。その先には際限なく物が積まれていた。
「うわ……」
「うわとか言っちゃだめでしょ」
「きゅー!」
「すいませーん!誰かいませんかー!」
「…………………」
「いないのかな?」
翔太が大声で問いかけるも反応はなかった。
際限なく積まれた物たちにより、声が反響しないのが余計不気味さを引き立てる。
「んじゃテキトーに物色しようぜ」
「いいのかな?」
「いいだろ。一応ここは店だぜ?」
「一応って……まあいっか。」
そうして将太一行は店の物色を始めた。
札の貼られた木箱や、何も書かれていないお面などの不気味なものからキラキラと星屑を放つ立体の星といったファンシーなもの、はたまた苔生したうさぎの形をした石まで幅広いジャンルのアイテムがあった。
「なんなんだこれ……?」
「さあ……でもこの世界のものでは無さそうだよね……」
「俺たち今やべえとこに来ちまってるってことだよな……」
「如何なさいましたか?」
「「うわっ!!!!!」」
いきなり後ろから物腰柔らかな声をかけられ二人は驚き振り返る。そこには背筋の通った老年の男性がいた。男性はこの様々な雰囲気が混ざり合う空間に、不似合いな雰囲気をまとっていた。いや、雰囲気がないというのだろうか、男性からは「無」という感じがした。
「驚かせてすみません。私は三代目店主の
「は、はぁ……?」
「本日は如何な御用で?」
「いえ!ただ珍しい店があるなと思い立ち寄っただけなので!失礼します!」
頭の上に疑問符を浮かべる橋本と足早に立ち去ろうとする翔太。しかし、翔太が出口へ向かおうとすると、突然もふけが鳴き声を上げて飛び出してきた。
「きゅきゅ!きゅっきゅ!」
「え!?もふけ!?」
「どうしたんだ!?」
「おや?」
もふけが肩に乗り体を前後に揺らす。「あっちあっち!」と指差すように。
もふけに従って歩くと、その先には淡い光を放つ灰色の石があった。
ここで店主の導月が納得いったかのようにうなずく。
「なるほど……」
「「?」」
「お名前を伺っても?」
「翔太です」
「橋本だけど……」
「ありがとうございます。翔太さん、あなたは
そう言って導月は話し始めた。
月に隕石が当たったときに出る膨大な熱と力の余波により月の石が割れて飛び散ったりする。それがまた宇宙で集まって一つの隕石になるというサイクルがあるのは余談だ。その際に月の石以外も宇宙へ飛んでいってしまうことがある。それを宇宙流れと言う。
「その月の石以外のものってなんですか?」
「それはもう君が現に触れていますよ」
「?」
「どういうことだ?」
「翔太さんの肩に乗っているものですよ」
「「え!?」」
「もふけって月から来たの!?」
「いやそんなことおとぎばなしでしかないだろ!」
「それが現実にありえるんですよ」
その後の導月の話を聞くともふけは
「え!?じゃあどうすればいいんですか?」
「もふけは消えちまうのか!?」
必死な二人の様子に導月は笑みをこぼす。
「落ち着いてください。月の石を月兎に食べさせればエネルギーは安定して消えることはないですよ」
「本当ですか!?」
「でも俺たちは金持ってねえぞ……」
「お代はいいですよ。月兎に関われたので今回は」
「「ありがとうございます!!」」
導月は先祖代々伝わる、月兎の伝説に関われた嬉しさにお代をまけてくれた。
早速月の石を手にもふけに差し出す。するともふけが月の石をバリバリと食べながら光りだした……
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