女性はなぜオカルトが好きなのか?

ネコ エレクトゥス

第1話

 僕の隣に座っている中年の三人組の女性が熱心に何やら話をしている。次から次へと話題が移っているらしいのだが、今度は近頃自殺した有名人の話になったらしい。どうやらその人物の自殺には何かの陰謀がかかわっているそうだ。陰謀説!何かすごいことになってきた。面白そうなのでそ知らぬふりをして話を聞いてみることにした。

 世の中には得体のしれない影の集団みたいなものがあるそうだ。彼らは何か陰謀を企んでいる。その陰謀にその人物は巻き込まれた……、らしい。

 面白い。陰謀よりもその女性たちが。女ってのはいったい何を考えているのか。そして何で女性たちはあんなにオカルトが好きなのか。興味を持ったのでその理由を考えてみることにした。


 まず女性には月経というものがある。ある種の動物が満月の夜に産卵するように、女性は確実に月の力を感じている。それをどのようにして感じているのか、音楽として感じているのか、色として感じているのか、それとも触覚として感じているのか。僕ら男性は絶対知ることはできない。ただ地球型生命体である限りその力は神経系での電気信号として捉えられ、実際の物としての存在感をもって感じられているのは間違いないのではないか?月と女性の間には何か物体が存在している。女性には僕ら男性の感じないものを実在の物として感じる能力が備わっているらしい。


 次に女性の行動様式について考えてみる。僕ら男性は例えばこんな行動をとる。

「今日は晴天で気温が25度だった。それなので一日半袖で過ごした。明日は気温が下がって風が強いらしい。それなら長袖にあと一枚羽織るものを用意しておくか。」

 女性はむしろ反応する。動物が冬毛を伸ばすようにある日の気温や風に関係なく冬物に移行していく。条件が整うと何かの行動となって現れる。秋に桜の花が勘違いして咲いてしまうのも同様な行動と思われる。

 またこんなこともある。僕の母親から聞いたのだが僕は真夜中近くに生まれたそうだ。出産が夜中に行われることが多いのは人間がサルだった時の名残らしい。女性とは太古から受け継がれ、幾重にも積み重なった蓄積にひっぱらられるように行動をするものであるらしい。そうすると時にはこんなことを感じることもあるのではないか?ホラー映画風に表現するとこうなる。

「私の中の見えない私が私を動かしている。」

 女性は僕ら男性の感じない何かに囲まれて生活し、内部の見えない力に動かされて生活している。その何かを見てみたい。触れてみたい。でもその何かに近づくには日常の一線を越えなくてはならない。それは怖い。でも見てみたい。

 女性がオカルト好きなのはこんな感じじゃないだろうか?


 実は僕も気になってオカルト方面は前にだいぶ調べたことがある。今だからはっきり言えるが、ほとんど全てに胡散臭いところがあって、ホラー映画的な意味での超自然現象は存在しないと言ってもいいと思う。超自然現象なるものはすべて自然現象である。ただ問題なのはこの自然現象なるものが僕ら人間のちっぽけな理解をはるかに超えたもであるということ。そういう意味では僕らは未知の力に取り囲まれて生きている。

 ドイツの文豪ゲーテにこんな言葉がある。

「あなたの知りうるものについては調べなさい。そうでないものに関しては崇めなさい。」

 

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