魔王に姫がさらわれて勇者が助ける物語ができるまで7

渋谷かな

第1話 王道7

「神の御加護だ! アハッ!」

 ミッキー神父はイースとフレッドの話を聞いて、天にいる神は孤児院を見捨てなかったと感謝した。

「痛い!? 痛い!? もっと優しく手当てしてくれ!?」

「うるさい! フレッド! 私に手当てしてもらえるだけありがたく思いなさい!」

 意外に不器用なシンディはフレッドの傷の手当てをしていた。

「イースを見習いなさい! 大人しくしてるでしょ!」

「あれは!? 痛すぎて気絶した瀕死状態では!?」

 イースは先にシンディの治療を受けて、生死の境を彷徨っていた。

「雑魚キメラを倒せる剣士見習いなどおらん! おまえたち二人を国家に差し出して国に貢献させれば、孤児院に二人分の寄付がもらえる! おまえたちを育てて本当に良かった! 倍返しだ! アハッ!」

「金の亡者かよ!?」

 国のために戦える兵士を育てるのは国民の義務でもあった。その分、優秀な国家騎士を育てれば育ての親に寄付金が入るという、この世界のお金儲けの方法であった。

「私も新しいフライパンが欲しかったのよね。」

「金のかかる女かよ!?」

「アハッ!」

 ミッキー神父に育てられたからか、シンディと神父の性格や笑い方は似ている。

「よし! 決めた!」

 ミッキー神父が何かを閃いた。

「今度の日曜礼拝はサボって、おまえたち二人を日曜剣術教室に連れていこう!」

「日曜剣術教室?」

「ダサい。」

 日曜教室やカルチャー教室など若者には面白くなかった。

「何を言うか!? 現役の国家騎士様が剣術を教えてくれるのだぞ!」

「国家騎士様!」

「スゴイ! 行きたい!」

「会ってみたい! 国家騎士様に!」

 しかし二人の憧れの国家騎士会えるとなると話は別で、二人の目はときめいて輝いていた。

「それなら早く傷を治さないとね。アハッ!」

「え?」

「私が慈愛の心で治療してあげるわ! 感謝しなさい! アハッ!」

「殺される!? ギャアアアアー!?」

「ほ、骨が折れる!? 骨が溶かされる!? 助けて!? 神様!?」

 こうしてイースとフレッドの傷は悪化した。

 つづく。

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