えすえふ

naka-motoo

さいえんすふぃくしょなるりありずむ

スーパーフィクション?


違う。サイエンスフィクションがSFだった。


そういうことをいつの間にか忘れてしまうぐらいに異世界が幅をきかせてる。


異世界ってなんだろう。


SFで解答を出してみよう。


SFは科学を根拠にした虚構なので虚構でありながらリアリティが極めて重要だろうと思う。リアリティがないと虚構にのめり込む気も失せてしまう。


ならば異世界は?


もしかしたらそれは科学を超えた科学なのかもしれない。


ぴぴぴ、とアラームの音が聞こえる部屋の、そのアラーム音にしたって200年ほど前ならばありえなかった事象だからその時代ならば十分SFだし、事実今のスマホだってSFの世界にしか存在しなかったものが具現化してるってことはリアリティが元々あったってことなんだろう。


SFを応援したい。


なぜなら異世界はもういいから。


「ロケットを作ったよ」

「材質は?」


僕の彼女はロケットを作る天才だ。

材料に使うのは廃棄直前となったNASAから回収資源としてトンあたり1万ドルぐらいで買い取ってきたスペースシャトルの解体された金属片だ。


それを彼女は丁寧に溶解した上で金型に流し込んでロケットを500基分まず作った。


「きれいでしょ」


彼女の手がとてもなめらかで全長2mぐらいの再生されたピカピカの薄い金属板で作られたロケットはジェット燃料をスポット業者から仕入れてきた僕を500基ずらりと並んで迎えてくれた。


「明け方に打ち上げるよ」

「楽しみだね」


僕と彼女は廃校になった中学校のグラウンドまで僕の父親が農作業で器具を運ぶときに使っている軽トラックを僕が無免許で運転してでロケットを運んで僕が荷下ろしして僕が並べて僕がああ疲れたって言った。


「ねえねえ。主語入れすぎだよ?」

「だって主語が無いって言われたから」

「誰から?」

「ジョーシから」

「上げるよ」


愚痴をいちいち取り上げないのが彼女のいいところだ。


彼女は500基のロケットのバーナー部分から伸びる導火線が500本、彼女の手首に巻き付けたあたりで一本にまとまってるその線に、マッチで火をつけた。


しゅわわわわわわ、って炭酸がうねるような音で導火線はどんんどん短くなって行って、ほんとうにどうやったらこういう精緻な計算ができるんだろうかというぐらいにほとんど同時にエンジンに着火した。


「発射!」


2mのロケットなのに点火からバーナーが吹き出てくるまでのその時間軸が大きな建造物のそれみたいにゆったりとしているんであたかも数十メートルのロケットのようなスケール感を覚えた。


彼女が発射!と叫んでから結構な時間が経過してからエンジンに点火し、バーナーがゴゴゴゴゴゴって唸り始めて。


そのまま大地を離れた。


「行っけー!」


彼女がラノベの主人公みたいに小さい『っ』を入れた言い回しでロケットたちに号令すると全基横並びでエアドームみたいな大気圏突破を目指して上昇していって、これまたはかったように全基段々と上から横、横から下に先端部分の方向を変える。


「あぶないぞ!」


僕が怒鳴ると彼女も走り出した。


500基だからね。


全基このグラウンドに落ちてきたら、当たらないように神仏に祈るしかないよね。


「なむなむなむなむ・・・」

「逃げるよ!」

「なむなむなむ!」

「早く!」

「なーむー!なーむー!」


着弾した。


グラウンドに穴が開いた。


「・・・・・・・ねえねえ」

「・・・・・・・なに」

「この穴に秘密基地作ろうよ」

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