第12話 作戦会議?



 僕の質問に対し、突然深妙な顔つきへと変わる貘。


 「それは…、というか話してもよいのか?」


 「それはどういう……、いや、大丈夫だ。自分のことを一番よく知っているのは自分でありたい。話してくれ」


 「分かった……、心して聞け」


 ——ゴクリ。


 空気感に乗せられ、僕の心臓の鼓動も回数を刻む毎に大きく響き、一回毎に、余波が身体全体に伝わっていくのが分かった。


 「勿体ぶらずに、早く言え」



 「つまりな、つまるところ、そのつまるところなんじゃがな………、よく……分からんッ、カカカカッ」


 貘は、小さい口を目一杯開けて、可愛らしく笑っていた。


 「はぁーー?お前こんなに溜めてそれか?!貘のくせに、一丁前にユーモアなんか身につけやがって!」


 「カカカッ!まぁ熱くなるな……。正確に言うと、詳しくはよく分からんという事じゃ。言うとの、吾輩がそちに見えておったということは、少なくともそちは吾輩以外の贋神と過去に一度は深い絆……、いや繋がりじゃな。それを持っていたという事になるはずじゃ」


 「深い繋がり?」


 「例えば、吾輩とあの娘の場合、吾輩は毎日のようにあの娘の悪夢を食べておったからの。時間が自然と吾輩とあの娘の波長を合わせていったという訳でじゃ。まぁ吾輩があの娘に合っていったというよりは、あの娘がこちら側、吾輩の波長に寄っていったという感じじゃが」


 「は?知らねーぞ、なんだ急に。僕は今までお前みたいな存在に出会ったことはないぞ」


 「吾輩も知らん、これ以上は本当に分からん。よし、これで何でもいう事を聞く…の件は終わりじゃな」


 貘は、崩れてバラバラになっていたジェンガを集めて箱に戻していく。


 「…………」


 自分で聞いたことではあるが、突然の貘からカミングアウト……。

 これを聞いたからといって、あーあれか!、となるような思い当たる節も無いため、今どうこうすることもないのだけれども……。

 分からない、知らないことを悩んでもしょうがない。

 僕は考えるのを止め、ジェンガの片付けを手伝うことにした。


 〓


 貘と遊び終えた僕は、昼飯がてら八重城に関する情報集めに出かけた。

 本来、今日僕は頭が痛く、少し熱も出ているという設定となっているから、勿論制服で出かけるなんてことはしない。

 そのため、服装は出来るだけいつも着ないような、僕のイメージと違うような服を着ている。

 僕のイメージ?そんなものをそもそも考えている学校関係者が一体何人いるんだろうか?

 その実、いない、という答えに行きあたるかもしれないけれども……、要するにだ、要するにこの場合のイメージというのは、僕の、僕による、僕のためのイメージと言っても差し支えはない。


 貘はというと、八重城が心配とかなんとか言って、八重城の元へ行った。

 勿論、心配なんて直接的なことは言わず、「お腹減ったなぁ〜、悪夢でも食べにいくか」とかだったかな。

 相変わらず、素直じゃないのはご愛嬌というやつだ。それに、昼間っから悪夢って……、もし授業中八重城が寝ていればそれも可能ではあるか。


 さて、


 情報収集とはいったものの、特に行くアテもないので、僕は公園で一旦一人作戦会議をすることにした。


 まず、作戦会議をする前に、僕はそもそも本当に八重城を助ける義理があるかどうかだに考えておきたい。行動理由について考えるのは勿論大事なことである。


 僕は、貘との会話の中で、特に疑問を持つこともなく助けるという決断をしたのだけれども、僕と八重城は、人間関係的に言えば一度会話をした程度、付け加えるとしても、僕が少し気になっている程度だ。LOVEではなくBOTHERの方で……。

 ただ僕自身、袖張り合うも多生の縁とかそういった類のものをそれなりに信じているクチの人間ではあるし、人外の存在である貘にまで頼まれたとあっては、僕の性格的にやっぱり断れない。何より、この状況に多少なりともワクワクしてしまっているのは確かである。

 これはおそらく、自分を何かの物語の主人公と重ねてしまっていることが原因だろう。

 昔から読んでいた漫画でも、困っている人がいれば、主人公は皆見捨てはしなかったし、その子が可愛い少女であるならば、尚のことだ。


 採決の時としたい——僕は八重城よながを助ける。

 助けられるよう、死なせないよう、最善を尽くし行動する。もし、自分の命運が乗っかってくるような事になれば、それはその時の成り行きで行動する。そうさせてほしい、今までそんな経験した事ないんだから、した事ないのに今からどうするかなんて決めても、その時の僕がどうするかなんて、今は分からないんだから。

 だから、ここでは最善を尽くすとさせてほしい。


 こうやって改めて覚悟を決めることで、気の持ちようも変わる。意識が変われば行動も変わる。こういうのが意外と重要だったりすると、どこかの偉い人も言っていたような気がする……。

 ま、何はともあれ気持ちは決まった。次はいよいよ本題だ。

 これが些か……いや、とてつも無く難題である。


 今知っていることから考えてみると八重城に憑いている神が死因となる可能性が高いとは思う。

 であれば、八重城をそういった類の専門家に診てもらうのが解決への一番の近道ということになるのか……。


 いや、そんは知り合いはいないな……。


 ——ぐぅぅ。


 思考に行き詰まった僕は、腹の音色に従い足を動かし、気が付いた時には近くの蕎麦屋で麺を啜っていた。

 

 作戦会議とは名ばかりな、公園での休息を挟んだ僕は蕎麦屋で腹を満たしていたのだ。知らないうちに……。

 ……勿論これは嘘である。


 「やっぱり蕎麦は出雲だな」


 腹八分そこそこに、街中を散策し時間を潰した僕が向かった先は明治駄菓子店だった。いつもの特等席で菓子を貪っていると、思っていた通り見ル野が現れた。


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めちゃめちゃ怪しい女の子は僕のクラスメイト!?気になるし美人なのでとりあえず話しかけてみます。 鳥孝之助 @tori3k

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