帰ってきた作家さんと編集くん1

渋谷かな

第1話 作家さんと編集くん1

「短編を書くのも疲れてきたな。」

 普段通りネガティブな作家さん。

「じゃあ、10万字の長編を書いてくださいよ。」

 ダメ作家に鞭を入れる編集さん。

「やっぱり試行錯誤するのは私たち二人の関係が一番いいな。」

「そうですね。使い勝手がいいですね。アハッ!」

「ワッハッハー!」

 仲良しな作家さんと編集さん。人間は脳みそを使っている時が楽しい。考えるのが好きなのだろう。

「1話完結の短編なんだけど、合わせれば長編になるような、美味しい物語を書きたい。」

「上手く考えましたね。10万字で100話を1作品で書くより、1作1話完結で大量に書く方が目立つと。さすが先生です。他の作家とは一味違う。」

「6年だよ。6年。この露出を増やす新しい理論にたどり着くのに6年もかかったのだ! これで不正者の水増し評価共に消されなくて済む! ワッハッハー!」

 何事も経験である。人生に失敗はない。失敗は成功の基である。


「それにしても何か良い題材はないのか?」

「もう、何を書いても似たり寄ったり。学園モノだろうが、異世界モノだろうが、ストーリー展開はほとんどの物語が同じですからね。」

「ヒット作の類似品に、同じストーリーの繰り返しばかりだ。」

「魔王を巨人に変えたり鬼に変えただけ。ドラクエをエフエフに、エフエフをグラブルに、タイトル変えただけでほぼ同じ。軽音部? 野球部? サッカー部? 百人一首部? 青春学園モノはやることが部活動でも、パロディーでも、恋愛でも一緒。」

「世知がない世の中ですな。」

「先生、お茶でも入れましょうか?」

「ありがとう。編集くん。」


「物語を逆さまに書くか?」

「面白そうですね。」

「勇者が魔王を倒しました。しかし平和になってしまうと勇者は無職になってしまうので、時間を撒き戻すことにしました。」

「さすが先生! 素晴らしいアイデアです!」

 腐っても作家さんは偉いのだ。

「でも、ここで書くってことは、あんまり書きたいとも思わないんだよな。」

「スランプというより、ストッパーですね。」

「私を下痢止めみたいに言うな。」

「すいません。先生。」

 身近な共感できそうな普通の会話であった。


「ダメだ!? 短編で書いていても続かない!?」

「やはり王道しかない。他の作品と同じような内容で書いていくしかないですよね。全ての他の作品は繋がっているんですから。設定が野球部と吹奏楽部と違うだけですからね。まったく全て物語の内容を変えるなんて無理ですよ。」

「そういえば昔も最終的に王道に帰ってきたような。」

「魔王にさらわれた姫を救う勇者。これが定番ですな。」

「弱い勇者の成長物語ですな。そこに友情、絆、お友達! 努力に勝利!」

「まさにジャン〇!」

「後は短編で書きながら、少しずつ修正をしていくか。」

「がんばれ! 先生! 先生なら、きっとできますよ。いつか・・・・・・。」

「いつだよ・・・・・・。」

 付き合いの長い作家さんと編集くん。






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