第三話・強脱怪獣少女【ヌガスゾザウルス3世】──【伝説怪獣原種母体怪獣キングマザードン】〈新妻〉登場
脳内会話が終了して、ベットのうつ伏せ状態から起き上がった香菜は、やる気のなさそうな顔で床に立った。
「やだなぁ……また、アレに乗るのは」
◇◇◇◇◇◇
『YMG─T』の格納庫では、お助け怪獣少女搭乗メカ『メカ・ムスメ』が、搭乗する香菜の到着を待っていた。
白衣コート姿の女性が香菜を見て言った。
「阪名 香菜が来たのだ、さっさとメカムスメのコックピットに乗るのだ……発進準備は整っているのだ」
メカ・ムスメの腹部コックピットに掛けられた、ハシゴを見た香菜がタメ息をもらす。
「どうして、乗り込むのにハシゴなんですか? 登る時にいつも男性隊員から、スカートの中を覗かれているんですけれど」
「怪獣出現に比べれば、香菜がパンツを見られるコトなど小さいコトなのだ……さっさと、ハシゴを登るのだ」
しかたがなく、香菜はハシゴを登って剥き出しのコックピットに乗り込んで安物の中古シートに座る。
「前から言おうと思っていましたけれど。このコックピット、どうして外フレームだけなんですか? 操縦者の安全は?」
「パイロットの安全よりも、メカ・ムスメの性能重視なのだ……それで良いのだ、香菜は何回コックピットから外に放り出されても生きているから。わたしがパイロットに選んだのだ」
「酷い……」
「メカ・ムスメの性能を説明するのだ」
「それ前にも聞きましたけれど」
「黙って、何回も聞くのだ……メカ・ムスメはオプションの装着で性能が変わるのだ──ウマのメカ耳とメカ尻尾を装着すればスピード重視のメカ・ムスメ──火器や砲台オプションなら、攻撃力重視の戦艦メカ・ムスメ──バランスタイプなら怪獣オプションなのだ」
格納庫に女性ハーモニーで「ニャンダバタ、ニャンダバタ」を繰り返す出撃ソングが流れる。
「ニャンダバダで、出撃するのだ」
メカ・ムスメが乗っている発射台がバネでビョ~ンと跳ねて、香菜が乗ったメカ・ムスメが空に向って発射された。
「ひぇぇぇぇぇぇっ」
◇◇◇◇◇◇
空から尻もちをつくような格好で、怪獣出現のビル街に落下したメカ・ムスメの前方に、四つ足で首が長い怪獣がいた。
登録されているデータで怪獣の名前は【強脱怪獣少女ヌガスゾザウルス3世】だと判明する。
《3世だと言っても過去に1世や2世が出現した記録はない……さぁ、どうする香菜》
「どうするって言われても」
香菜が困惑していると、ヌガスゾザウルス3世が後ろ足で立ち上がった。
3世の腹部には、黒いマイクロビキニ少女の前面が、張り付くような格好で露出していた。
驚く香菜。
「おまえ、後ろ足で立てるの?」
見ていると3世は、近くのビルに爪を掛けて、バナナの皮を剥くようにビルの外装を、奇妙な歌を歌いながら剥きはじめた。
「なにが出るかな♪ なにが出るかな♪」
逃げ遅れた建物内の階層の人々が、外装が剥がされドールハウスのように、内部が剥き出しになった部屋の中を逃げ惑う。
ヌガスゾザウルス3世は、次々と建物の外壁を剥がしていった。
「なんとかしないと、そうだスピードタイプのメカ・ムスメはキック力が強かったんだ」
香菜がメカ・ムスメを操作して。
ヌガスゾザウルス3世に連続キックを浴びせる。
「ニャンダバダダダダダダダダッ!」
一旦は、退いたヌガスゾザウルス3世だったが、発生させたバリアーでメカ・ムスメを弾いて転倒させる。
「きゃあぁぁ」
コックピットから放り出されて、骨組みだけになった建物の階を、ダンダンダンダンと勢い良く下まで転落する香菜。
アスファルトの道路で数回バウンドして、公園の芝生の上に落ちた香菜は、頭を擦りながら呟いた。
「危ないなぁ、普通の人間だったら即死している高さだよ」
その時──大地が揺れて二体目の怪獣が出現した。
首のところから、トランプのキングのようなヒゲを生やした人妻が顔を覗かせていて、エプロン姿で片手にフライパンを持った怪獣が。
ニー・ガッタが、現れた新怪獣を見て言った。
『伝説怪獣原種母体怪獣キングマザードン】〈新妻〉……公園デビューを狙って、こんなところに隠れていたのか』
キングマザードン〈新妻〉と、ヌガスゾザウルス3世の壮絶な怪獣バトルがはじまる。
キングマザードン〈新妻〉の口からの愛妻新婚光線を、未婚者バリアーで防いだ、ヌガスゾザウルス3世はそのまま新妻の脱がしにかかる。
怪獣の外皮をするっと剥がされた、キング
マザードン〈人妻〉の中から、今夜の勝負下着姿の新妻が現れた。
「ヒィィィィィ⁉ 今夜のオカズは肉ジャガよぅぅぅ」
意味不明な捨てセリフを残して、新妻のキングマザードンは走り去ってしまった。
マザードンを倒した、ヌガスゾザウルス3世は四脚姿勢に戻ると、勝利の
ニー・ガッタが小声で佳奈に囁く。
『今がチャンスだ! 変身せよ下等生物、阪名 香菜……変身してワレと意識を入れ替えろ』
公園のトイレを見つけて入り口に、駆け寄った香菜の前に待ち構えていた、ウタガイが現れた。
「来たわね待っていたわ、トイレに入って、あなたは何をするのかしら?」
「どいてください、モレそうなんです」
ウタガイ ユキを突き飛ばした香菜は、個室に飛び込むと内側からカギを掛けて叫ぶ。
「カナァァァァァァ!」
公園トイレの天井を突き破って、一見すると裸か? パステルカラーカラーの模様がついた極薄のスキンスーツを着ているのかわからない。裸体巨大ヒロイン【サカナカナ・セーラー】が現れた。
ウタガイが、巨人の正体を突き止めた勝利の表情をする。
「見たわよ、思った通り。阪名 香菜の正体は……」
その時──ウタガイの頭に。落ちてきた
「きゅぅぅぅ」
意識を失ったウタガイは、今見たばかりの記憶を失った。
◇◇◇◇◇◇
香菜と意識が入れ替わった、ニー・ガッタが腰に手を当てて言った。
「ワレのこの体を、じっくりと熟視して……裸か裸でないか、見極めるが良いぞ下等生物……今のワレは気分が良いので、どんな
香菜が、スマホのレンズを向けている野次馬に向って、心の中の涙声で叫ぶ。
『見ないでください、裸じゃないんです! こういう模様なんです!』
突進してきた、ヌガスゾザウルス3世の角をつかんで叩き折る、サカナカナ・セーラー。
「もう、光線技を使うのも面倒くさいから……このまま、皮を剥いてやる」
そう言うと、サカナカナ・セーラーは、ヌガスゾザウルス3世の背中に馬乗りになって、背中の中央に指先を押し込むと未完の皮を剝く要領で3世の皮を剝く……中から一回り小さい、ヌガスゾザウルス3世が現れた。
さらに、皮を剥くともう一回り小さい、ヌガスゾザウルス3世が……それを剥くと、もう少し小型のヌガスゾザウルス3世が……剝かれる、剝かれる、剝かれる。
数分後──ヌガスゾザウルス3世は、皮を剥かれて消滅した。
「見たか、ワレの実力を……さあ、勝利のポーズで股を開くので。撮影して拡散させるが良いぞ……ジュワァ」
ニー・ガッタの意識が表に出たサカナカナ・セーラーは、足を開いた格好で飛び去って行った。
『空を飛ぶ時は、足を閉じて飛んでくださ──い!』
裸で闘えカナ、隠すなカナ、世界は君の変身した姿の配信を待っているぞ!
【サカナカナ・セーラー】~おわり~
裸体巨大ヒロイン【サカナカナ】「裸じゃありません!こういう模様なんです!」 楠本恵士 @67853-_-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます