第75話 さぁ、これから向かいますかね!
大将はあの後、直ぐにどこかへ行った。
今、その場にいるのは呆然としている俺と────俺を見守るダリルさんのみ。
「とりあえず──俺からの卒業おめでとう。そして親父の直弟子もな……これから俺達は兄弟だ!」
「はい……」
これから色んな人に狙われると言われた後のせいか嬉しくない……大将の直弟子も不安しかない。
「そんな浮かない顔をするな……ギルマスからは逃げられるんだから良い事もあるだろ?」
確かに!
だけど、それと引き換えに色々と犠牲する未来しか見えないのも確かだ!
「ちなみに、直弟子になるとどうなるんですか?」
「まぁ、普通に強くなるまで訓練だろうな……。なんせ後継者にするつもりみたいだし──俺の時とは違うだろうな……」
「死ぬような訓練じゃないですよね?」
「コウキ次第だろうな。エリーは普通に教えてもらってたみたいだし案外大丈夫だろ」
それは絶対ない! 大将は女子供と男は絶対区別している! 断言出来る!
「ダリルさん……」
「コウキ……時には諦める事も必要だ」
いや、そこは諦めるなだろ!?
確かに逃げるのは不可能かもしれないけどさ!
もっと気の利いた言葉言おうぜ!?
「はぁ……もうすぐ夕方ですね……。領主様のパーティーってダリルさんについて行けばいいですか?」
考えても仕方ない。これから訪れるであろうパーティーの事を聞こうと話を変える。
「あー、そういえばそんなのあったな……」
忘れてたんかい!
「ダリルさんと一緒に来いってギルマスから言われましたよ?」
「そういえば、エリーと一緒に服屋に行ったんだったな……。正直言うと俺は行くの嫌なんだよな……トラブルが起こる気しかしない……」
ダリルさんは戦闘狂であり、型を覚えない我流の達人だ……つまり本能の塊という認識をしている。
そんな人が嫌な予感しかしないというのは本当に何か起こるような気がしてしまうな……。
明日に出発するというのも気になる。
何か事態が動いているのか? エリーさんとも関係している?
少し探りを入れてみよう。
「エリーさんと付き合う事に反対はないんですか?」
「おっ、付き合うのか?」
「いや、決めかねています。ただ、親としてどうなのかなと」
「俺とテレサは大賛成だな。エリーは良い子だぞ? しかも────「遅いっ! 早く用意して行くわよっ!」────タイミング悪いな……テレサ……」
俺とテレサ……つまり反対している人がいるという事だろう。しかも────の後が気になるぞ!?
テレサさんが迎えに来て続きが聞くに聞けない。ダリルさんも何故かそれ以上は話す気はないようだ。テレサさんがいると都合が悪いのだろうか?
俺達はそのまま、宿屋に戻り────
領主の館に行く準備を整える。
宿屋から出た所で集合という事だったので、俺はギルマスから貰った高級な服を着ている。
正直、少し派手で似合っている気がしない。
目の前を行き交う人達にけっこうジロジロと見られている。
そんなにおかしいのだろうか?
部屋に鏡なんて無いから自分の姿が全くわからん。
「待たせたな。エリーが駄々をこねてな……。おっ、男前な格好だな! よく似合っている」
声をかけられて振り向くと────いつもの冒険者姿ではなく、豪華な服装でオールバックにしているダリルさんがいた。
「さっき来た所ですよ。ダリルさんも見違えるぐらい格好良いですよ! ……それで、エリーは何でまた駄々こねてるんですか?」
「いや、どうしても着ていきたい服があるらしくてな────おっ、来たな」
俺は振り向くと黄色いドレスのエリーと赤いドレスを着こなしたテレサさんがいた。
俺は見惚れてしまう。
本当────どこかのお姫様のようだ。
「コウキに買ってもらった服が良かったのに……」
そんな言葉をボソッと聞こえてきた。
確かにあの服も似合っていたが、明らかに今のドレス姿の方が良い。
「エリー、とても似合っているよ? この間買ったのも似合ってたけど、ドレス姿はまた違うエリーの魅力を引き出している────本当、どこかのお姫様みたいだよ!」
ダリルさんは苦笑している。なんで苦笑いなんだよ!?
「本当? 変じゃない?」
不安そうな顔をしているエリーに更に言葉をかける。
「本当さ! 10人中10人は振り向くはず!」
「コウキは?」
「俺もガン見してる!」
「ならいいか……」
少し照れたようにハニカム笑顔を見せるエリーに不機嫌さはなくなったようだった。
「コウキ君〜ほらっ、私はどうかしら?」
テレサさんも褒めてほしいのだろう。大きなお胸様を強調してドヤ顔で言ってくる。
「ははっ、よく似合ってますよ? ダリルさん、愛する妻に声をかけてあげて下さい」
俺はダリルさんに丸投げする事にして、エリーの隣に移動する。
ダリルさんは照れながらも愛の言葉を囁いている。
そんな姿をエリーと2人で見守る。
「コウキも似合ってるよ……」
そんな声が隣から聞こえてきた。
俺は顔を向けると頬を真っ赤にしたエリーがいた。
「ありがと」
俺も笑顔で返事をする。
なんかカップルみたいだな。
このまま、領主のパーティーが無事終われば言う事なしなんだけどな……。
俺達は宿屋の裏に用意された馬車に乗り込み領主邸に向けて走り出す────
剣神に哀れまれイケメンに転生!彼女が欲しいけど【ロストメモリー】で台無しに──変態に狙われ何故か強くなる事に── トロ @tonarinotororo
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