霊は健康体
鯨飲
霊は健康体
人は死んだ後、天国か地獄に行く。
そう考えられていることが多いが、実はそうではない。
実際には、誰しもが一旦は地獄へ送られ、そこで生前の罪を償うことになる。
そして、罪を償った後、天国へと向かうのだ。どんな善人だとしても、一つも悪事を行わなかった者など、存在しないからである。
悪事にも様々なものがあるが、その中でも最も重い罪に問われるものが何なのかをご存知だろうか。
それは暴食である。七つの大罪のうちの一つとしても数えられている暴食が人間の罪としては、最も重いのである。
なぜならば、人間は食物連鎖のピラミッドの頂点に位置する生き物だからである。
つまり、暴食は他の生き物の命をいたずらに奪ったと判断されるのである。
暴食の罪を犯した人間は、地獄で飢えを味わうことになる。
地獄とは、神様が統帥する領域の一つではあるが、神様のいる天国との交流は隔絶されており、閻魔大王にその管理は一任されている。
なぜなら、神及びその配下である天使は、まわりの人間を幸せにするための存在だからだ。地獄には相応しくないのである。
隔絶されている二つの世界ではあるが、その二つの世界が共通して繋がりを持っている世界が一つ存在する。
それは、人間が生活している現世である。現世の様子は両方の世界から確認可能だ。天国は人々の善行を、そして地獄は悪行をそれぞれチェックしている。
しかし、先代の閻魔大王の時に問題が起こった。それは、職務怠慢である。
閻魔大王の任期は百年なので、その間多くの人間に罰を与えてなかったことになる。
始めに説明した通り、死後の人間は、地獄で罪を償った後、天国へ向かう。
そのため天国へ太った人間がそのまま向かってしまった。
天国内で、太った人間がどんどん増えていく様子を見て、神は地獄が仕事をしていないことを悟った。
そこで神は問題解決に取り組み始めた。その際に用いるようになったのが、二つの世界、いずれとも繋がりを持つ、現世であった。
神は、現世の「写真」を利用することにした。視覚的に確認することができるので、確実だと判断したのだ。
暴食の罪を犯した人間は、天国に行くために書類審査を受けるシステムになった。暴食の罪を償う、つまり痩せていないと天国に入ることは不可能になったのだ。
写真という技術は、現世にしか存在しない。そのため、書類審査用の写真を撮るためには、現世に行く必要がある。
さらに、現世へ行ったとしても、カメラは物体なので、触れることができない。そのため、自撮りすることが不可能である。現世の人間達の写真に映り込むしかないのである。
そのため心霊写真に、はっきりと映る幽霊に、太った幽霊はいないのである。
また、顔だけが映っていたり、ぼやけて写っている幽霊は、太った身体を誤魔化しているのである。
霊は健康体 鯨飲 @yukidaruma8
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