告白するために必要なこと

奈那七菜菜菜

告白するために必要なこと

「もし、明日世界が終わるとしたら、何をしたい?」


 意中の人、柏木さんはそんなことを聞いてきた。


「えー。明日? 難しいな」

「悩んでる暇はないよ。あと、8時間くらいしかないよ」

「しかも、リアルタイム」


 柏木さんは時々、こんな変な質問をしてくる。


 クラスでも不思議ちゃんで通ってるけど、今日の質問も中々に意味不明だ。


「うーん。じゃあ、親に感謝の気持ちでも伝えるかな」

「それから?」

「え? 1つじゃないの?」


 柏木さんは、早く早く、と催促してくる。


「じゃあ、好きなものでも食べるか」

「あとは?」

「まだ言うの?」


 柏木さんは少しだけ、頬を膨らませている。


 本当に意味不明。


「あとは、好きな人に想いを伝えるかな」

「ほうほう。ベタだねー」


 柏木さんは満足そう。


「そういう柏木さんはどうするんだよ?」


 俺だけ答えるのは不公平だろ。


 柏木さんは、えー、なんて言いながら笑っていた。


 嬉しそうに笑いやがって、かわいいな畜生。


「私はねぇ。家族と、好きな人と一緒に過ごすの」

「へ、へぇ?」


 好きな人。

 その単語に少しビクッとした。


 柏木さんから、そういう話題が出ることなんてなかったら。


「柏木さんだって、けっこうベタだと思うぞ」

「いいんだもーん」


 柏木さんは満足そうに笑うと、鞄を持って教室から出ていこうとする。


 その背中が遠くなる。


「か、柏木さんは、好きな人いるの?」


「いるよ」


 はっきりと言われて、ガクッとした。


 そうか。

 柏木さん、好きな人いるんだ


「じゃあ、柏木さんはその人と最後の日は過ごしたいんだね」

「うん」


 素敵な笑顔だ。


 その人が羨ましい。


「できれば、10時間ぐらいは一緒にいたいかな」

「いやに、具体的だな」


 朝から一緒にいる訳じゃないんだな。


「うん。だって、最後の日に告白される予定だから」

「え?」


 それって。


「柏木さん! もしかして!」


「早く帰ろうよ」


 柏木さんが走っていく。

 その頬は赤く染まっていた。


 それは夕焼けのせい、じゃないかもしれない。

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告白するために必要なこと 奈那七菜菜菜 @mosty

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