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それから十数日、依頼通りダンジョンに潜っていたが鎧に出くわすことは無かった。

再度突入した際に既にボスは狩られており、戻らずに突撃しておけば良かったとも思ったが後の祭りだ、消耗も無く下層へ進むことができたと考えれば悪いことばかりでもない。


現在依頼の進行度はおよそ七割程度、恐らく一週間以内には達成となり今のダンジョンに入ることはできなくなるので、それまでに可能な限り下層まで下り他の旅人に対してアドバンテージを取っておきたい。一応初日にドロップした剣が性能的にも要求ステータス的にも一線を画すものだったためプラスではあるが、現状で剣を使うのが俺とエルのみのため可能であれば他のメンバーにも何か恩恵のあるものが欲しいところだ。一応確率で心技や心術を覚えられるアイテムもドロップするらしいが、残念ながら未だに見たことは無い。

しかし、連日ダンジョンに籠り戦っていたため大幅なレベルアップとそれに伴う術技の習得は行われていた。


「僕たちも大分強くなったし、そろそろまた10階層のボスに挑んでみない?」


その日の探索を終えいつも通り食事を取っているとき、エルが唐突に言いだした。


「こないだ逃げたばっかじゃん、もっとレベル上げないと厳しくない?」


「いやいや、かなり良い線行ってたと思うし、多分もう少しで勝ててたよ。」


「そうかなぁ?」


エルとメイトがあーだこーだと言い合っているが、俺としては逃走はあっても死亡が0なのだからわざわざ無理してまで挑む必要は無いと思っている。


(装備の消耗も馬鹿に出来ないしな。)


しかし、パーティのリーダーとしては反対の立場を取らざるを得ないが、俺個人としては挑みたい。このまま放置して10層の掠種を狩っているだけでも金には困らないだろうが、ボスの初回討伐で得られるものがあれば戦力の増強にもなる。勿論、安全策を取り稼いだ金で装備や術技を充実させるのでも強くはなれるが、それでも本当に強力なものは市場に出回らない。

また、超低確率でスキルを覚えられるアイテムが落ちるようだが、それらが個人間で取引されたという話は一度も聞いたことが無いため結局は積極的な攻略を目指した方が強くなれる可能性の余地は多いだろう。


どちらもゲームの攻略としては間違いないが、そもそも完全な正解と言うものもまた存在しないためやはり一度意見の統一をした方が良いだろう。


「二人ともそこまでだ。リーダーの一存で決めても良いが、それで禍根を残しても詰まらない。先ずは他のメンバーから意見を聞いて、それから決めるぞ。」


「僕はボス攻略に消極的賛成です。あれから強くなりましたし、他から聞いた情報を統合するとどうやら相当削れていたのは間違いなさそうですので、以前の戦闘から詳細に戦術を練れば勝利も可能かと。」


「あたしもどちらかと言うと賛成。と言うか、生活圏が脅かされる可能性があるんだから、誰かが倒さなきゃ。それに近いのならあたしたちがやるべきよ。」


フェルズは勝利の可能性を、ストレは自身の生活の安全を考えての賛成だ。


「俺も個人的には戦いたい。だが、リーダーとしてはもし敗北した場合を考えると反対だ。アイテムや装備の損耗を補填できるだけのリターンが無ければ、今までの稼ぎが無駄になってしまう可能性がある。」


リーダーとして、やはり多少は悲観的に考えておかなければならない。


「とは言え、それもフェルズの話を聞いてからだ。賛成するってことは、作戦があるんだろう?それも、勝ちの目が大きいのが。」


「ええ。あの装備を固めた猿ですが、戦って感じたのは目の良さです。洞窟内、それも光源が篝火しかないにも係わらず暗色の装備で固めたストレさんを完全に捕捉していました。つまり、あの目は暗視やサーモグラフィーのような役割を持っているのでしょう。それなら、光量も十分かつ高い熱も放っているライトの心術で目を眩ませることが可能なはずです。」


「んー、確かにそれなら一時的には凌げそうだけど、そう何回も使える手じゃないよね?私だってライトばっかり出してたら真っ先に狙われるだろうし。」


「その通りです。メイトさんの心術は消耗も大きいですが、それに見合った火力も持ち合わせておりますので貴重なダメージソースです。それを放棄してまで多少の足止めをしたところで決定打とはならないでしょう。」


「じゃあどうするのさ?僕もアルも手数重視だからDPSはそこそこだけど瞬間火力は低いよ?」


「でぃーぴーえす?」


「ダメージパーセカンド・・・1秒間にどれだけのダメージを与えられるかの指標ですね。実際に1秒でどうこうできるわけではないので、60秒間に与えたダメージを60で割ってDPSを算出したりします。」


「何となくわかったわ。で、今回はそんな悠長な時間は取れないからそのDPSってのよりも単発でのダメージの方が重要ってわけね。」


「そこで、今回のメインとなる火力はメイトさんとストレさんです。」


「あたし?」


「正面からの火力はメイトさんが断トツでしょう。しかし、背後が取れるのなら確実にクリティカルを起こせるストレさんの方が上です。」


なるほど、捕捉され続けて思うように背後が取れなかったという事は、裏返すと本能的に一番厄介だと思われていたのか。


「あぁわかった!あの発狂状態までは普通に削って、そこからストレで一気に倒すんだね。」


「その通りです。恐らく綺麗に入ると一撃で落とせるでしょう。また、発狂まではエルさんが問題なく受け持てていたので安全だと思います。しかし・・・。」


「ストレの攻撃が当たるか、当たったとしてもそれで終わらせられるかが問題か。」


「当たる確率は高いでしょうし、当たれば倒せる確率も高いでしょう。が、もしものことを考えると消極的な賛成としたのがわかっていただけると思います。」


「難しいところだな・・・。ストレ、どうだ?」


「どうだって言われても・・・。確実に相手の目を潰せるなら絶対に当てるわよ。」


なんとも心強い言葉だ。絶対にやれると言うならやってもらおうか。


「よし、なら俺たちはお膳立てをしてやろうか。それまでの主役はメイト、お前だ。二人とも頼んだぞ。」

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ネクストジェネレーション 海底中央 @himmel0426

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