「おはよう」


「おはよう」


「もう、朝?」


「ずいぶんゆっくりとした朝だね」


「うん。わたし。ずっと、眠っていたような、気がする」


「ずっと、眠っていたよ。僕が入院する前から、きみはずっと。だから、久しぶりの、おはようだ」


「そっか。雨は?」


「雨はもう、上がってるよ。もうすぐ朝だ。ちょっと待ってね。ええと、午前四時だ」


「目が」


「うん。見えるよ。君の音も、聴こえる」


「うれしい。あなたが。わたしを、見てくれる」


「この耳を失うのがこわくて、目の治療に踏み出せなかったんだ。まさか、君を失うとは、思ってなかったけど」


「ごめん、なさい」


「あやまらないでよ。きみのおかげで、きみがいたから、僕は生きていられる」


「わたしも。あなたが、わたしの、生きる意味、だから」


「今度は、消えないでくれよ」


 手を握って。


 隣に座って。


「好きだよ。ずっと側にいる」


「うん。ありがとう。わたしも。好き、です」


「空。もうすぐ、夜が明けるな」


「きれい」


 ゆっくりと。


 空が、青から紅に。染まっていく。


 それを、二人で寄り添って、眺めた。

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晴れるまで、午前四時の朝焼け 春嵐 @aiot3110

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