第2話 冷やしたぬき
茹であがったそばを流水が溜まった桶に入れる
フキンを洗うようにそばを揉みながら流水にあてる
芯までしっかり冷やしたそばをそのままどんぶりへ
刻んだきゅうりと細切りのナルト
揚げ玉はたっぷりと
中央に黄身をのせて最後に海苔を少々
つゆは添えて
保温ポットに入ったそば湯
冷やしたぬきは町内会長のいつものメニュー
たまたま店の破れた網戸を店先で直していたら声をかけてくれたのが最初のきっかけ
それから時々店に顔を出すようになった
こんな俺を同じ町内の住民として接してくれている
丁度空いていた店舗兼住居
本当はそば屋でもラーメン屋でもなんでも良かった
郊外で不特定多数の人間が出入りする場所であれば
直してる網戸を見ながら元々そば屋だったこの店が、亡くなった奥さんとの思い出の場所だって話なんて聞いちまったもんだから
そば屋にしたのはただそれだけさ
580円です
「ありがとう
ごちそうさん」
お礼を言うのはこちらの方です
そばざる @juttejapan
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