アルバトロスとイーグルの大冒険2
渋谷かな
第1話 アースとイール2
「いや~! フェニックスの卵の目玉焼きは美味しいな!」
アースはレアな食材で作った目玉焼きに感激していた。
「私の料理の腕がいいのだよ! フォッフォッフォッ!」
「おまえはセミの宇宙人かよ?」
確かにイールの料理のスキルは高かった。
「そういえば、色んなモノを食べ過ぎて、色んな能力を手に入れ過ぎてしまった。」
「キャラクターの強化なんて戦う他にもいくらでもできるもんね。きっとフェニックスの卵を食べた私たちは不死身になったはずよ。」
「死にたくても死ねないのが、また増えた。俺たちのカスタマイズに限界はないのか?」
「ない。あんたが限界を失くしてくれ! なんてお願いするからいけないんでしょ。私たちの友情と努力と勝利だわ。」
いったいアースとイールの過去に何があったのか。
「俺たちが目指すモノは冒険者として一番になることだ! やるからには一番に拘らなければ! 目指せ! 最強の冒険者!」
「私たちに二番という文字はない。二番ではダメなんです。」
二人の目的意識は高く共有されていた。
「大会やクエストで一番になってお金を稼いで、俺たちの様な貧しい子供たちに寄付して助けるんだ!」
「やっちゃえ! アース!」
アースとイールは貧しい孤児出身だった。
「さあ、どのクエストに参加しようかな?」
アースたちはクエストの一覧を見ている。
「面白いのがあるわよ。」
イールが興味を引くクエストを見つけた。
「どれどれ? 大怪獣ガジラを倒した者に国王より討伐金100万マネーだって!」
「電子マネーで良ければ、更に10倍の1000万マネーになるんですって!」
身近で共感できる大怪獣の討伐とご褒美は電子マネーの方がお得で、よくあるクエストである。
「ルールは無条件。大怪獣ガジラを倒した者の勝ち。」
この世界のルールは単純だ。強ければ勝ち、弱ければ負ける。ただそれだけだ。
「よし! エントリーするぞ!」
「おお!」
アースたちは大怪獣ガジラ討伐クエストに参加することにした。
「やる前から俺たちの勝ちは決まったも同然だな。」
「ガジラ、元気にしてたかしら。アハッ!」
どうもアースたちは大怪獣ガジラと知り合いみたいだった。
「さあ! 始まりました! 大怪獣ガジラ討伐クエスト! 果たして誰がガジラを倒すことができるのでしょうか! 現在の3万人の冒険者が挑戦しましたが、大怪獣ガジラは健在! いったい電子マネー1000万円分を手に入れるのは誰だ!? クエスト解説はコメンさん。司会は私、モデがお伝えします。」
クエストをSNSでライブ中継する専門の業者や司会者や解説者もいる。
「大怪獣ガジラを倒すのは俺様だ! 誰にも電子マネー1000万マネーは渡さんぞ! 勇者の名にかけて! 勇者の俺は絶対に負けられないのだ!」
相変わらず、つまらない勇者ブレーブのプライドだった。
「まったく馬鹿馬鹿しいですね。勇者ならモンスターを退治してお金を稼げばいいんでしょうね。」
「そうですね。最近の勇者は電子マネーが好きなんでしょう。」
勇者を見て時世を悲しむ司会者と解説者であった。
「ガオー!」
大怪獣ガジラは仁王立ちで勇者を睨む。
「ガジラよ! これを見ろ!」
「ギャオ!?」
「ガオ!?」
勇者は小さな怪獣を捕まえていた。
「何ということでしょう!? 勇者ブレーブ!? 大怪獣ガジラの子供を人質に取っています!? なんという卑怯!? とても勇者のすることとは思えません!?」
「最低だ! このクソ勇者!」
解説と司会の二人も勇者に怒った。
「子供を助けたければ降伏しろ! 俺様に跪け! ワッハッハー!」
正に悪役の勇者。勝つためには手段は選ばなかった。
「ガオ!?」
「ギャオ!?」
大怪獣ガジラの親子はお互いに心配しあう。
「どうやら1000万マネーは俺の物だな。ワッハッハー!」
勝利を確信した勇者。
「ちょっと待った! 俺たちのペットに何をしてくれているんだ!」
「なに?」
そこにアースとイールが現れる。
「よう! ガジラ! 久しぶり! 元気だったか?」
「ガオー!」
「直ぐに子供を助けてあげるわね。」
「ガオガオ。」
アースとイールは大怪獣ガジラと久しぶりの感動の再会を果たす。
「なんだ? 子の子供たちは? そういえばどこかで見た様な?」
勇者は何かを思い出した。
「ゲゲゲッ!? おまえたちは卵泥棒の子供たち!?」
勇者はアースとイールに特売卵クエストで負けた。
「あ、おまえ、卵勇者。」
「うわあ!? 子供を人質なんかに取って最低。」
アースとイールも勇者のことを覚えていた。
「何とでも言え! 俺様は勇者! どんな手段を使っても勝たなければいけないのだ! 勇者に敗北の二文字はない!」
これが勇者のプライドだ。言い換えれば人間の業である。自分の立場、自分の権利を捨てることができない欲の塊であった。
「懲りない奴だな。また痛い目に合わせてやる!」
「やっちゃえ! アース!」
アースたちは勇者を倒すつもりである。
「ふん! この前は子供だと思って油断しただけだ。俺様も本気でやってやろう!」
「こいよ! へなちょこ勇者!」
いよいよアースたちとイースの戦いが始まる。
「この前のようにはいかないぞ! なぜなら、助っ人を呼んでいるからだ!」
「助っ人!?」
勇者は一人ではアースに敵わないので助っ人を呼んでいた。
「自分で戦わないのかよ!?」
「ふん! 勇者は勇気だけあればいいのだ! いでよ! 俺様のお友達! 僧侶のプリーストだ!」
「どうも~プリーストです。」
現れた僧侶はチャラかった。
「よく来てくれた。プリースト。」
「ブレーブ。おまえ子供を人質にとって、それでも勇者か?」
「勇者だ。ワッハッハー!」
「ワッハッハー!」
悪い勇者に悪い僧侶はバカ笑いした。類は友を呼ぶという典型的な悪い例である。
「回復は任せたぞ!」
「おお! 任せておけ! 賞金は山分けだからな!」
悪い僧侶はお金に目がない。
「最低。」
「最低。」
アースとイールは何か汚いものを見ている眼で勇者たちを見ている。
「本当に最低ですね。」
「最近の学校の道徳教育はどうなっているんでしょうね?」
解説のコメンと司会のモデも呆れている。
「うるさい! 最低でもいい! 勝てば官軍負ければ賊軍! 最後に勝った者が勇者なのだ!」
これが勇者のモットーであった。
「最低。」
「おまえは俺様の味方だろうが!?」
「アハッ!」
僧侶のプリーストも勇者を最低とは思っている。
「くらえ! 勇者の氷魔法! ブレーブ・アイス!」
勇者は氷で攻撃する。
「ドッカーン!」
見事にアースとイールに命中して氷柱が上がる。
「見たか! 勇者に歯向かうから子供の氷漬けになるのだ! これで1000万電子マネーは俺の物だ! ワッハッハー!」
子供たちの命よりお金が大切な勇者。
「それはどうかな?」
「なに!?」
氷の中からアースとイールが姿を現す。
「バカな!? 俺の氷を食らっても平気だというのか!?」
勇者は自分の目を疑った。
「あれぐらいの氷は問題ない。自分の属性を氷に変えれば凍ることはない。」
「しまった!? こいつら属性を変えれるんだった!?」
うっかり者の勇者様。
「おい!? そんな話は聞いていないぞ!?」
「言うの忘れてた。アハッ!」
「忘れてたで済むか!? こいつらただのガキじゃないぞ!?」
仲間割れを始める勇者と僧侶。
「絶対零度の世界を知っているか? 白い世界を走る狼を見たことがあるか? 霜でできた巨大な巨人に出会ったことがあるか?」
「はあ!? 何を言っている!?」
「私たちは夢も希望もない絶望の氷の世界を知っている。だって本当の地獄を生きてきたんだから。子供を人質にとる様なせこい勇者様の氷なんて何とも思わないわ。」
「なんなんだ!? こいつらのいう本当の地獄とは!?」
得体の知れない子供たちにたじろぐ勇者。
「勇者様に氷を倍返しだ!」
「やっちゃえ! アース!」
アースは全身から冷気を醸し出す。
「なんだ!? この強大で威圧的な冷気は!?」
勇者は子供の氷にビビっていた。
「おまえたちに本当の氷神を見せてやろう!」
「氷神?」
「我、アルバトロスとの契約に置いて命じる! いでよ! 我が友! オーディンよ!」
アースは高めた魔法力を解放し魔法陣から何かを呼び出す。
「うおおおおおー!」
氷神オーディンが召喚された。
「よく来てくれた。オーディン。」
「ありがとう。オーディン・」
「アース、イール、久しぶりだな。体は大丈夫なのか?」
「ああ、相変わらず感覚はないけどね。」
アースには秘密が多い。アルバトロスという名前。本当は体の感覚がなかったり。
「ギャアアアアー! 化け物!?」
「聞いてないぞ!? なんで神様級を子供が召喚できるんだ!?」
勇者と僧侶は怖気ついて腰を抜かしていた。
「偽勇者たちとは嘆かわしい。最低。」
氷神オーディンも瞬時に状況を把握し勇者たちを最低と蔑んだ。
「積もる話は後だ。先にあいつらを一緒に倒して、ガジラ親子を助けよう!」
「分かった。微力ながら協力するぞ!」
アースとオーディンは同じ動きをして同時に技を繰り出す。
「くらえ! 裁きの槍! グングニル・アイス!」
氷の槍が偽勇者たちに向けて放たれる。
「ギャアアアアー!? 覚えてろよ!」
「ギャアアアアー!? またね~!」
勇者たちは遥か彼方に吹き飛ばされていった。
「子供だからって、なめんなよ!」
「やったー! 私たちの勝利ね!」
「正義は勝つのだ! ワッハッハー!」
勝利を喜ぶアースとイールにオーディン。
「ガオー!」
「ギャオー!」
助け出された大怪獣ガジラの子供と親ガジラが泣きながら抱き合って喜んでいる。
「おおっと! アースとイールの少年少女コンビが極悪勇者を倒して、ガジラの子供を助け出しました! 感動の親子の再会です!」
「良かった! 実に良かった! ウルウル。」
思わず解説者と司会者も感動して涙を流す。
「オーディン、ガジラ。良かったら賞金の電子マネーは半分こして持って帰ってくれ。」
「いいのか?」
「北国で貧しい人たちに炊き出しでもしてやってくれ。」
「ガジラも子供のギャジラをファミレスにでも連れていってあげてね。」
「ギャオー! ギャオー!」
「ガオー!」
こうして賞金の電子マネー1000万マネーは北国の人々と大怪獣ガジラに分け与えられた。
「俺たちは、自分のお金は自分で稼ぐ!」
「今度はピラミッドに神秘の秘宝でも探しに行ってくるわよ!」
こうしてアースとイールの冒険はつづいていく。
つづく。
アルバトロスとイーグルの大冒険2 渋谷かな @yahoogle
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