よく練られたストーリーに、読みやすい文章。ただ怖いだけの作品とは一線を画す結末。

対になっているもう一つの作品「まっくろな想い」も読まれると、より一層作者の世界観に引き込まれます。

とある兄妹のお話ですが、無邪気な妹さんと父・母の期待を一心に背負う兄の物語です。
純粋な妹さんが最後には……。とてもびっくりしました。
また兄の方はなんとなく伏線は張ってありますが、そういった状況だとはつゆ知らず生きています……恐らく。

この両親はどう考えているのか、どう思っているのか。そう思いを巡らせるのですが、恐らくあまり反省はしていないのかな、と悲しくなってしまいます。

抑圧的な両親にひたすら勉学に追い立てられ、心を病んだ主人公。彼をひとすら慕う妹、「ましろ」。その存在は救いであるとともに、時に、わずかに重荷にも――そんな複雑な心を背景に、兄妹の通学路が語られます。

まっしろな想い。まっしろな心。その表現からイメージされるのは、純真で、まっすぐで、美しい心ですが――だからこそ生まれる恐怖があることを、この作品はつきつけます。
読了して思いました。「人間なんて雑多でごちゃごちゃでいいんだよ」と。

妹のましろは可愛いけれどとってもうざい。その愛情は強烈で、違う世界でも変わらなすぎる。
この作品は「まっくらな想い」と連作になっており、私は「まっくら～」から読むことをお勧めします。狂気ともいえる純粋な愛情がどんな結末をもたらすのか、それがより伝わってくると思います。
違和感から始まり、がらがらと足元から崩れていく。恐怖とちょっとした切なさをぜひ感じてほしいと思います。

仲の良い兄妹と厳格な両親。どこにでもありそうな家族間の小さな過ちは、やがて取り返しのつかない大きな破滅を一家にもたらす事となった。
一体全体、この家庭に何が起こったというのか？

面白いのは悲劇を読み解くヒントが序盤から次々と提供されるのに、それを元に馬鹿正直な推理をしているとあっさり足元をすくわれる所でしょうか。
真相は深い闇の底にあるのものなのです。

二つの話が対となった内の一つ目。
読む順番はこちらが先でしょうか。
それならきっと片方はハッピーエンドなんだろうって？
さてはて？　どうかご自分の目で確認なさって下さい。