参ノ巻 刹罰



「今の時期がどのような時期かはわかっているようだな?」


挫刹が刀太郎に問いかけます。


「そうだ。今は仏走しわすだ。オレさまたち仏が、お前たちクズの人間をこの一年間のうちに犯した業の報いで仏罰を刹罰として与えて走り巡る時期だ」

「……ぼ、ぼくたちが何をしたというんです」

「物を食ったァッ!」

「ぁがぁっッ!」


挫刹が手で念じると、刀太郎の腕が軋みを上げて激痛を走らせました。


「キサマ、命を食ってきたよな? その命に対しての罰だ。お前のその今の腕の痛みはな。だが食われた命はこの比ではない恐怖だっただろう。お前はそれを想像して生きているのかッ?」


挫刹は、大人達から何の罪もないと言われて育った無垢な痛がる小童こどもを睨みきって言います。


「お前?今日は何を食った?魚か?コメか?それとも汁物か?水だけをすすって生きてきただけか?答えろ。それともまさか……血抜きでもした肉でも食ったかぁッ?」


ぬぅんッ!と念じた挫刹が、刀太郎の腕を痛みだけで捻じり切ります。


「っうッ?ッうがぁぁァッぁっァぁアぁァッぁっァァぁアアぁぁァッぁァぁアッぁァァぁァッぁァlっぁァッぁぁァァぁアッぁっァァぁァァぁァァぁァッぁァぁアっぁァッぁァッぁっぁっァぁァッぁァッぁぁァッぁぁァッぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁっぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッっッ!」


骨折した以上の痛みを放つ腕を押さえて、刀太郎は大きな声を上げて叫びのたうち回ります。


「キサマは命を食った。なんだ?草木ならいいのか?植物ならいいとでもいうのか?植物は命ではないとぬかす気か?では植えるときの種とはなんだ?畑で世話をしないと枯れて死ぬだろう?おい?植物は命だな?その命をお前は食った。罪だッ!」

「ゥがぁァァぁァぁアッぁアッぁアッぁァッぁぁァッぁァあぁぁぁぁァッぁァッぁっぁっァァぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁっぁっぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッっッ!」

「足らんッ!」

「ゥがぁぁァッぁッァぁひアぁァッぁぁァッぁっぁアッぁっぁっァうアァぁぁアっぁっァァあっぁなぁアぁっァァっぁっァァっぁっァあぁぁくあぁぁぁアッぁッぁッぁっァっぁアッぁぁまあっぁアっァっァァぁァっぁっァぁアアぁァァぁっァァぁァッぁぁァッぁっぁぁァッぁァッぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁあああっぁぁっぁぁっぁぁぁっぁあぁあうあぁああっぁあなあぁっぁあヵぁっぁっぁぁかっぁぁっぁぁぁぁっぁっぁぁっぁあぁっぁぁぁっぁっぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっッッぃッ!!」

「……なんだキサマ?泣いて叫べば気が済んで罪が消えるとでも思っているのか?ふざけているのか、キサマ?そんなことで今までお前が散々食ってきた命がお前を許してくれるというのならばな? ……お前も食われた時にそれで相手を許す、という事になるぞォッ?」

「……ち、ちがっ」

「違うだとぉっ?!ぉンっ!」

「ァうぁっぁっぁぁァッぁっぁァッぁっァァぁアッぁァッぁぁああぁっぁアぁァっぁっぁァッぁッぁっぁアッぁぐぁっァっァァっぁアッぁぁっぁっぁぁァッぁァッぁァァ穴ぁァっぁァッぁァァぁっぁぁァッぁァッぁぁっぁァッぁアッぁァッぁっぁあゃあぁっァっぁァッぁっぁぁァッぁっぁっぁぁァっぁアっぁアぁっァァッァあなっぁァッぁあぁぬぁァッぁァぁァっぁっぁぁアぁアッぁぁアアファッぁァッぁっァァぁァッぁっァっぁっァァァっぁっぁさぁっぁァッぁっぁっぁっぁァッぁァッぁっァっぁっぁっぁっィアぁぁっぁぁぁっぁっぁぁっぁぁぁぁあああっぁっぁぁぁぁああひああっぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁあぁぁ母ぁっぁぁっぁぁぁっぁぁさっぁぁっぁっぁっぁあっぁっぁあぁぁっぁっぁぁぁっぁぁぁぁあぁぁぁっぁっぁぁっぁぁぁ母ぁっぁぁぁっぁっぁぁぁっぁぁっさぁぁぁっぁあっぁぁぬぁぁあっぅあああぁうあぁあああぁっぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッっっ!!!」

「……と、刀たぉおっ」

「まだだッ! ぬぅんっ!」

「ぅぁわぁァッぁァッ!ぁァッぁぁァッぁッ!ぁァぁァっぁァぁッ!」

「おやっ、おやめっ、おやめください。この子にはっ、この子には何の罪もないので……っ」

「罪はあるッ!」

「があぁっぁァッぁァッぁっぁっァァッァぁっぁっぁァッぁっァっぁっぁァッぁァッぁァッぁぁァッぁぁァっぁっぁっぁぁァッぁアぁっぁっぁァァぁァっァァぁアッぁァぁアぁッ!!!!!」

「と、刀太ぁッ」

「黙れ」

「ァうッ」


我が身も顧みずに、泣き叫ぶ自分の子供に近寄った刀太郎の母親は、それでも痛がることを止めない自分の子供の姿に耐えきれずに罰を与えている挫刹に縋りつくも簡単に足蹴にされてしまいます。


「愚か者どもめ。子供には罪はないだとっ? それを決めるのキサマラではないッ!罪がないとでも思ったのか? 植物の命さえ取っておきながらこのていたらく。万死に値するッ!」

「お、お願いします。この子だけは、この子だけはッ、どうかッ」

「ふん?その童だけでいいのか?」

「えっ?あ、ぃえ……、そ、それはっ」


挫刹が、痛がる我が子に寄り添う蹴られた泥で汚れたままの母親を問い詰めます。


「お前の子供はそいつだけなのかっ?」

「っそ、それは……、あ、そ、そんなぁぅぅぅうぅ」


ただ泣き崩れるばかりで、ほとけへの返答もろくにできないまま無力な母親が痛がり呻く我が子を庇うように身を挺して己の身体で覆い隠しました。


「……ぁ……ぁあさん……、ッぅぁアぁあッッ!」


腕の痛みでのたうち回る刀太郎は、覆い被さる傷ついた愚かな母親の温もりを感じながらも、なお激痛の沸き起こる地獄に耐え、非力な自分を呪うのでした。



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昔々、刀太郎という童がおりました 挫刹 @wie

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