神秘再び

あの日から俺は意識して変な音などを無視するようにした。


チリン


「ん?」


「明日斗、どうかしたか」


「いや、何でもない」


またか、また聞こえた。


あれからこういったものを今までより多く感じる。


音が聞こえたり、においがしたり。だが俺はそういったものを無視していた。


もう二度と関わらないために。


健太と別れるいつもの交差点に来た。


「じゃあまたあとで」


「ああ、また塾で」




「よし、これで全部かな」


俺は休日ということもあり、買い物に来ていた。


ここら辺は人が多いということもあってかあまりあれらを感じない。


「やっぱ街中の方がいいのかな」


そんなことを考えながら駅の方へ向かう。


ふと、風が渦を巻いているのが見えた。


「つむじ風?こんな街中で?」


しかし、周りの人がそれに対して反応していないのでそういうものかと思った。


風が横を通り過ぎた。


強い風だった。当たったら皮膚が切れそうなくらいには。


「きゃーーー!」


悲鳴が聞こえた。


俺は驚いてそちらを向いた。そこにはさらに驚くべき光景が広がっていた。


男性が倒れていた。そして頭と胴体が離れていた。しかし、本来そんな状況であれば血だまりができているはずなのに傷口から一切血が出ていなかった。


「なんだ、これ」


俺は後ずさった。


男性の心臓はまだ動いているのだろう。切断面が内出血のようになり、少しずつ血が染み出し始めた。


心臓の鼓動が速くなる。そして、この普通ではない現象を見て分かってしまった。


また巻き込まれてしまった。


また横を風が通り過ぎる。ぼとりという音が足元からした。


足元を見てみると腕が落ちていた。右腕だ。先ほどの男性と同じように血は全く出ていない。


「え?」


そして自分の右腕の感覚がないことに気が付いた。恐る恐る自分の右腕を見てみると途中から先がなくなっていた。痛みは感じない。


「これ、俺の?」


俺は俺の右腕を拾う。


周りは男性の首が落ちたことでパニックになっている。


「明日斗!こっち!」


俺は自分を呼ぶ声の方を見る。そこには麻穂の姿があった。今日は鎌は持っていない。


俺は麻穂の方に走っていった。


「なんだよ、これ!」


「いいからこっち!」


麻穂は路地裏をどんどん進んでいく。


表通りではいまだに叫び声が聞こえる。


「ひとまずここまでくれば大丈夫でしょ」


路地裏を右へ左へ10分ほど走った。


「なあ、あれ、なんなんだよ」


「カマイタチよ」


「カマイタチ?」


俺は記憶を探る。


「カマイタチって自然現象だろ?」


「それもあるけど、あれは神秘の方よ」


麻穂は俺に近づいて、俺の腕を取り上げる。


「お、おい!」


「じっとしてて」


麻穂は俺の腕の切断面を合わせる。そして何やら呪文を唱える。


すると腕の感覚が戻った。


「これは」


「魔法よ」


俺は自分の手をぐーぱーさせる。


「なあ、あのカマイタチ?なんでこんな街中に出てきたんだ?」


俺はそういったものは無視してきた。


「一度神秘に触れてしまうと、神秘の方も見付けやすくなってしまうの」


麻穂は俺の方を見る。


「あなたも最近多く感じてたんじゃない?」


確かにその通りだ。ということは


「じゃあ、俺のせいってことなのか?」

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神秘は実はすぐそばに @aromaserap

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