神秘について

目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。


「目覚めたみたいね」


声の方に顔を向けると、先ほどの少女が立っていた。


「君、は?ここは?」


俺は少女に問いかける。


「私は麻穂、ここは、そうね、隠れ家、みたいなものよ」


「隠れ家?」


俺は周りを見回す。壁に大きな鎌が立てかけられていた。


はっ、として俺は身体を見てみる。服が自分のものではなかった。


「あなたの服は血で汚れてたから今洗ってるわ」


「血で」


俺は血を噴き出して倒れる巨大な犬のことを思い出す。


「あれは、あの大きな犬は何だったの!?」


「知らない方がいいこともあるんだよ」


男性の声が聞こえる。


「とはいえ、そういわれても納得は出来ないよね」


そういう男性は和服を着ていた。


「あなたは?」


「僕は、まあ、陰陽師、かな」


「陰陽師?」


俺は疑わしそうな眼を向ける。


「まあ、信じられないよね。でも君も見たんだろう?」


確かにそうだ、俺は見た。普通ではありえない巨大な犬を。


「あれは突然変異か何かですか?」


「突然変異ならよかったんだけどね」


男は首を横に振る。


「あれは悪霊の類よ」


麻穂がそういう。


「悪霊?」


俺は首をかしげる。


「でも俺も見えたぞ」


俺は麻穂に問いかける。


「悪霊って幽霊なんだろう?なんで見えたんだ?」


「悪霊だから、よ。普通の幽霊なら見えないわ」


俺は首をかしげる。


「どういうことだ?」


「悪霊は普通の霊よりも強力な力を持っているの。だから普通の人にも見えるのよ」


「力?力って?」


俺は訳が分からないという。


「霊力とか、妖力といわれるものだね」


陰陽師の男性が答える。


「そんなものあるわけ」


そういうが、逆にそういった方がしっくりくるということも分かった。


「じゃあなんで、あんなものが普通に見えるのに話題にならないんだ?」


「普通の人間は、そういったものに本能的に近づかないように気のせいとか思うようになっているの」


麻穂が話し始める。


「だから普通は気のせいとかで片付けられて話題にはならないの。例外もあるけど」


「俺がその例外?」


麻穂は頷く。


「じゃあ、俺はこれからは意識して気を付ければいいのか」


変な音とかに無意識が働かないなら、意識して近づかないようにすればいいのか。


「俺の服はどこにありますか?」


「もう乾いてるんじゃないかな」


陰陽師の男性が扉の方を向く。


俺は扉をくぐる。洗濯機は止まっていた。


洗濯機の中のものを回収しながら考える。


あの人たちが言っていることをすべて理解できたわけではない。信じられないところもいくつかある。


しかしまあ、またあんなも目に合うこともないだろう。


「帰るかい?なら送るよ」


陰陽師の男性が玄関から出て車を回してくれる。


「車、なんですね」


「まあ、文明の利器は使わないとね」


俺は男性に住所を教えると男性は車を走らせた。

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