異世界ファンタジー名探偵マック3

渋谷かな

第1話 犯人は美少女

「まずい!? もう少しで殺人犯と付き合うことになる所だった。」

 思わず殺人犯の女も好きなっちゃう名探偵マックの活躍。

「そうか! 分かったぞ!」

 頭脳明晰なマックは問題の答えを名推理で瞬時に導き出す。

「俺に彼女がいれば、変なストーカーに出会った時にきっぱりと断れる。これだ。俺は彼女を作るぞ!」

 マックは恋人を作ることを決めた。

「探偵ごっこのおまえについてきてくれる女の子がいるとは思えん。」

「マック、食事中は静かにしなさい。」

 マックの父親と母親は息子の探偵ごっこに興味はなかった。

「お兄ちゃん、また事件よ。さっさと出かけたら?」

「なに!? 事件!?」

 マックの妹のミスド。当然のように妹も兄の探偵ごっこに興味はなかった。

「今朝、フード学校の近くで大勢の人が倒れているのが見つかりました。」

 異世界ファンタジーニュースが事件を放送している。

「事件だ! 事件が俺を呼んでいる! ワクワクするぞ!」

 マックは事件を知ると興奮する性格だった。

「行ってきます!」

 マックは朝食も半分で靴を履いて出かけていった。

「まったく騒がしい奴だ。あんなんで彼女ができるものか。」

「探偵ごっこをする情熱と同じくらい勉強をしてくれると嬉しいんだけど。」

「あ~、恥ずかしい。あんなお兄ちゃんを持って妹の私は恥ずかしい。」

 家族は身内に探偵ごっこをしている人間がいることを迷惑がっていた。


「おはようございます。カーネル警部。」

「おお、マックくん。来てくれたか。助かった。」

「警部、また事件を迷宮入りにしようとしましたね?」

「アハッ!」

 殺人事件の現場にマックは到着した。異世界ファンタジー警察の面々が捜査をしていた。

「警部、状況はどうですか?」

「恐らく犯人は人の魂を抜き取るモンスターか妖怪の類だと思うんだが。」

「そうですね。でも被害者の顔を見ていると嬉しそうににやけている様な。」

 何かにマックは気がついた。

「う~ん。」

 そして周囲を見回すマック。

「カーネル警部。犯人が分かりましたよ。」

「なんだって!? もうわかったというのかね!? マックくん!?」

「はい。楽勝です。なぜなら犯人は事件現場に戻って来るという習性があるからです。」

「なに!? ということはこの野次馬の中に犯人がいるというのかね!?」

 事件現場は野次馬でいっぱいだった。

「犯人はあなただ!」

 マックが多くの野次馬の人々の前で犯人を指名する。

「はい? 私ですか?」

 犯人と指名された少女はおっとりしている、とてもカワイイ美人であった。

「その通りです。あなたが犯人だという証拠もあります。」

「ええー!? 私、何にもしていませんよ!?」

 確かに少女は何もしていなかった。

「そう、あなたは何もしていません。」

「え? ほら、私は無罪じゃないですか。」

 当然、何もしていないなら犯罪は犯していない。

「違います。あなたの罪は、その愛らしい笑顔で余の男共をメロメロに骨抜きにしてしまうことです。そう、犯罪の証拠は、あなたがカワイイ過ぎるということです!」

 少女の罪は存在そのものでした。

「見てください! この魂を抜かれた男たちはあなたを見てメロメロに腰が砕けてしまったんだ!」

「ええー!? 私って罪な存在なのね。エヘッ。」

 愛くるしく笑う少女は可愛かった。

「カワイイ!」

 カーネル警部なんかはメロメロで捜査はそっちのけである。

「自白しましたね。」

「しまった!?」

「観念するんだな。愉快犯!」

 マックは少女を追い詰める。

「え? どうして私が悪いのよ。私は普通に生きているだけです。」

「そう、あなたは悪くない。」

「え? どういうことですか? 私は良い子なの? 悪い子なの?」

 困惑する少女。

「どうするんだ!? マックくん!?」

 事件の迷宮入りを心配するカーネル警部。

「出てこい。本当の犯人。カワイイ少女に取り憑いて男の魂を抜き取っている悪魔め!」

「なに!? 悪魔!?」

 マックは少女に悪魔が取り憑いていると見破っていた。

「姿が変わっていく!?」

 少女から醜い女の悪魔が異世界ファンタジーらしく姿を現す。

「よくぞ見破った。人間の男よ。私の名前は女夢魔サキュバスだ。」

 現れたのは女夢魔のサキュバスだった。

「当たり前だ。どんなにカワイイ少女でも歩いているだけで人間の魂を抜くことは不可能だからな。」

 ごもっともである。

「ええー? 私に悪魔が取り憑いていたんですか? 私はどうしたらいいんですか? 助けてください。」

 恐怖でもおっとりしている少女。

「大丈夫です。俺にはあなたを助ける方法が一つだけあります。」

「それはなんですか?」

「俺と結婚してください。そうすれば俺が悪魔を退治しましょう。」

 マックは自分と結婚してくれるなら悪魔を倒すと交換条件を持ちかける。

「マックくん!? それは強引な強要じゃないか!?」

 思わずカーネル警部が法の解釈を持ち出す。

「はい。分かりました。あなたと結婚するから悪魔を倒してください。」

 しかし少女はあっさりと了承した。

「うんな、アホな・・・・・・。」

 呆れるカーネル警部。

「交渉成立だ。二人の意思が一つになったんだから、脅迫でも、強要でも、ストーカーでもありません。合法が成立しました。婚約者を救うのは当然のことですよね。」

 こうしてマックと少女は婚約した。

「さあ! こい! サキュバス!」

「ふざけるな!? おまえの心も私が抜き取ってやる!」

 カーネル警部同様、サキュバスも呆れていた。

「やれるもんならやってみろ。」

 しかしマックは微動だにしない。それどころか楽しそうに笑っている。

「なに!?」

「普通の探偵は事件の謎を解いて警察に任せて終わりだが、俺は違う。俺はモンスター退治までやるプロの名探偵だ。」

 マックは犯人であるモンスター退治までする探偵だった。

「まさか!? おまえが有名な!? あの異世界ファンタジー探偵か!?」 

 悪魔の間でもマックの探偵の名声は聞こえていた。

「その通り。俺の名前はマック。異世界ファンタジー名探偵さ。」

 少年の名前はマック。名の知れた名探偵だ。

「それがどうした!? たかが探偵如きが悪魔である私に勝てると思うなよ!」

 女夢魔サキュバスがマックに襲い掛かる。

「おまえ、さっきから探偵、探偵、うるさいんだよ! 俺は名探偵だって言っているだろうが!」

 かなりプライドの高いマックは名探偵の名が抜けて探偵と呼ばれると自尊心が傷つくのであった。

「知るか! 心を抜き取ってやる!」

 女夢魔サキュバスは突進をやめない。

「いいだろう。この俺を名探偵と知っても挑んでくるなら、倒させてもらう!」

 マックは戦闘態勢に入る。

「いでよ! 名探偵の剣!」

 マックは手品みたいに何もない所から剣を出現させる。

「名探偵の剣だと!?」

「その通り。名探偵の俺のためのディテクティブ・ソードだ!」

 名探偵は剣を構える。

「どんな難事件も快刀乱麻! くらえ! これが俺の名探偵斬りだ!」

「ギャアアアアー!? やられた!?」

 マックは必殺技で女夢魔サキュバスを斬り倒した。

「安心しろ。動けなくなる程度の峰打ちだ。」

 女夢魔サキュバスは死んではいなかった。

「どうして人間の魂を抜いたんだ?」

「私は夜、人間の夢の中だけで少しずつ魂を分けてもらっていました。それなのに新しい魔王様が人間を滅ぼせと言うんです。」

「新しい魔王!?」

「はい。魔王様は悪魔やモンスターに人間をいじめてこいと言うのです。私は魔王様が怖くて従っただけです。ごめんなさい。」

 女夢魔サキュバスにも罪を犯す理由があった。

「そうだったのか。すまない。」

「え!?」

「悪いのは新しい魔王だ。全てがおまえの罪じゃない。罪を償ったら大人しく暮らすんだ。」

「ありがとうございます。」

 謝ってもらい、自己の境遇を聞いてもらい、自分を理解してもらい、再び生きるチャンスをもらった女夢魔サキュバスは涙を零すであった。

「あの! 刑務所で罪を償ったら、あなたの魂を抜きに行ってもいいですか?」

「それは断る。」

「ケチ!」

 こうして女夢魔サキュバスはパトカーの乗せられて連行された。

「はい。一件落着。」

 事件を華麗に解決する異世界ファンタジー名探偵であった。

「マックさん、悪魔を退治してくれてありがとうございました。」

「当然のことをしたまでですよ。俺たちは結婚するんですから。アハッ!」

「そうですね。エヘッ。」

「そういえば、まだあなたの名前を聞いていなかった。お名前はなんて言うんですか?」

「アリス。私の名前はアリスです。」

「アリスか、いい名前だ。」

 モス子やスタバ子ではなくて、ほっとしたマック。

「これからよろしく。俺のアリス。」

「はい、私のマック。」

 無事に二人は意思を共有したのだった。

「どんな難事件も解決してみせます。俺は名探偵ですから。」

 異世界ファンタジー名探偵マックの大活躍は始まる。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

異世界ファンタジー名探偵マック3 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る