第11話 絶対悪~少女の決意

「半殺しで」?


サクトは朱華の言葉に眉をひそめた。


朱華は戦闘においての能力は申し分ない。


だが、この期に及んで『悪鬼』とも呼べるほど残忍極まるこの男タケルを生かそうと言うのだ。


甘さを捨てきれない、というかやはり日本人だ。

サクトや朱華が元いた日本の感覚のままでここにいる。

それは本人にとっても命取りであり、また新たな被害者を大量に産む感覚だ。

ならば。

サクトは朱華に『この世界での生きる術』『駆除すべき生物の選別』を実戦を持って学ばせることにした。


「朱華…お前が殺れ」

「は…?なんで?人間だよ?できるわけないじゃん!」

「人間か。じゃあさっきのゴブリンのように怪物の姿をしていたならお前は殺るのか?」

「!…それは…」

「やれやれ。その力も宝の持ち腐れか」


二人のやり取りを見ていて痺れを切らしてタケルが言う。

「いい加減かかってきなよ。どっちでもいいよ?男なら殺すし。女の子なら軽く遊んで持って帰るし?ははっ!」


軽い口調のタケルにサクトはちょっとムカついてきた。

「やっぱり俺が殺すか」

サクトは朱華に背を向けてタケルに向かって歩きだした。


「おっ!男からくるか。いいよ。ちょっと試したい技もあるし!」


タケルの剣がドロドロと液状に変化していく。

すると、宙を舞い散って全ての女性の遺体にベシャッとかかった。

遺体はその液体に溶け込んでいった。


再び液体は集まりタケルの剣へと戻っていった。


「いいよねぇ、この術。俺がイメージして編み出したの。女の子の死体の有効活用だよ。俺が強くなるための糧にってわけ」


タケルという男、分かりやすく外道である。

サクトは怒りや悲しみこそ感じてはいないが明らかに生命と死者への冒涜である。

ここまでの悪意、やはり生かしておくと面倒だ。


「さてもういいな。殺す」


構えたサクトの肩を朱華の手がガシッと掴んだ。

痛みを感じるほどに強く。



「ごめん。あたし間違ってた。実戦で学ぶよ」

「…というと?」


サクトの問いに朱華が決意を持って返す。


「あたしがブッ殺す!!」


そう言い放ち朱華はタケル目掛けて拳を突き出した。


誓いのポーズとも受け取れる様だったが、次の瞬間にはタケルの顔面の骨が軋んでいた。


「がっ…はっ!」

タケルは地に膝をついて鼻から滴る血を目にするとワナワナと肩を震わせた。


「女の分際で…!女ごときが!大人しくヤられてろよ糞アマが!!」


先ほどのチャラさは失せて余裕の欠片もなくなったタケルが口汚く朱華を罵った。


対して涼しい顔で、しかし確かな決意と怒りを宿した表情で朱華はタケルを睨んだ。


「あんたみたいのを許すとか。あり得ないわ。もう綺麗事もあたしがいた世界の基準も捨てる。あんたには地獄に落ちてもらうよ」


心から鬼へと変わった少女の姿がそこにあった。

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異世界ヒロイズム~サイコパスとJKは転生犯罪者と戦争する MASU. @MASUMASU69

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