第40話  たどり着いた場所



 あれからずいぶん経ったが、俺の記憶は完全には戻っていない。

 好き放題に生きたのは覚えている。好きな女を抱いて、嫌いな男を殺して。小気味よかったのは確かだ。それなりに満足もしていた。

 なのに、なぜか俺はそれらすべてを捨てて逃げ出した。

 逃げた?

 俺は逃げたんだろうか。逃げるというのは、窮地に陥ったやつのやることだ。俺は追い詰められていたのか? 何に?

 もう、よくわからない。

 考えると頭がおかしくなりそうだった。

 気がついた時、俺は山奥で山賊に襲われていた。もちろん皆殺しにした。そのときにふと思った。山賊もいいな、と。

 その山は交易街を繋ぐ要路で、適当に荷馬車を襲えばそこそこの稼ぎになった。べつに無理してとりすぎなくても良い。もう襲われることがわかっていて、自分から通行料を置いていく賢いやつもいる。ちょっと遠出すれば街にも出れる。女も抱ける。

 じゃあいいか、となった。

 いろいろあった気がするが、それらすべてが面倒だ。この山で完結した生活を送るのも悪くない。小間使の下っ端と、囲いの女を何人か。手早く揃えて山賊としての暮らしを安定させた。悪くなかった。冒険者だった頃より人も殺していない。

 誰に責められる筋合いもない。誰も俺を助けてくれないのだから。

 俺の行いを改めさせたいのなら、助けてくれればいいのだ。

 それもできない無力なやつらの意見など、聞く価値なし。

 俺は好きにやる。

 それでも、時々下っ端が、おかしらは冒険者だったんでしょと聞いてくる。なんでそれを続けなかったんですかと。

 俺は答えることがない。それでも心の中で呟く。

 もう、あまり人と関わるのはよそう。

 ろくなことにならない。










                  完











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強すぎるから冒険者除名? ふざけるな殺してやる。 顎男 @gakuo004

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