主人公のレイジはとにかく強い。無敵の状態から物語は始まる。
だが、その“強すぎる”ゆえに世間から疎まられ冒険者除名までされてしまう。
それは、何故か。
せっかく異世界転生できたこの世界にも「世間体」があるからだ。
強ければいいのではなく、協調性や人を思いやる言動、おとなしい性格、物事をナァナァに片づけられる忍耐力等々・・・それがハッキリと求められている。そしていくら多くの魔王を倒せる力を持っていても、それらが少しでも欠如している性格ならば、「不要の人物」と位置づけされ、闘うことを許さず排除される。
旅の途中で出会った貧しい少女は画家を目指しており、実際レイジも認める芸術あふれる才能を持っていた。が、貴族出身の画家からしか絵を買わない仕組みになっている商会があるゆえに、少女は自信を無くしていた。追い打ちをかけるように商会は「腕がいいだけの貧乏人が描いた絵になんの値打もない」とハッキリ言い放つ始末。
この胸糞なシステムの世界に、主人公・レイジは憤る。
だから、殺す。殺しまくって街をまるごと滅ぼしたりしている。
いや、実際気に入らないからぶっ殺してしまうのはイカンのだけれど、ここは RPGの世界。
おそらく聖書とか我々の住む世界にはなさそうな、超越した場所である。
この展開はレイジが、卑猥で劣悪が横行している街を滅ぼしているという、有名な「ソドムとゴモラ」の代行をしている風にも見ることができる。
─────読者は、読んでいて実に心地よいのである。
レイジは、社会不適合者では決してない。
ただごまかしのきかない、まっとうな「正論」のみで生きているだけなのだ。
人間の、都合の良い理不尽を指摘しているだけなのだ!
なのに、転生までしたのにどうしてそれが認められないのだろうか? 邪魔者扱いされるのだろうか?
これは今後の社会の中で生きていく上で、人間全体の考え方や価値観を改めるべきという、メッセージ性の強いつくりにもなっている。
当作品は、RPGの世界観でストーリーが進められてはいるが、醜い現実世界をむき出しに掘り起こして斬りまくっているため、ある意味「風刺作品」とも言えるだろう。
1話ごとの展開が早く文章も短めなので、読みやすい点も非常に良い。
今後の展開を、心待ちにするばかりである。