「やっぱり、こうなったか」


「え」


「やっぱり、とは?」


「この子が来た時点で、かさがなさん目当てだと思ったんですよ。はあ。私はまだまだ本省に戻れそうにないなあ」


「その演技」


「え」


「いらないですよ。かんどりから、聞きました。リモートワークで本省の仕事をしてると」


「ちょっと。かんどりちゃん。何をばらしてるの」


「ごめんなさい。雰囲気で、つい」


「何を、利用するのですか?」


「いや、利用というか。光を蓄光、反射する新素材。見ました?」


「あの岩場の、結晶ですか」


「そうそれ。色々と使えるかもしれなくて。でもあれは、ここでしか生成されないんです」


「あれが、か。綺麗だったな」


「なのにここ、ガラス固化体の埋設予定区域なんですよ。ほんとばかみたい」


「それを止めるために、ここへ?」


「ええ。あんなに使える結晶があるのに、汚染されるなんてもったいない」


「なら、これを。データ移送します」


「写真データ?」


「ここで撮れた写真だと言って、コンテストか何かに出してください。すぐに賞を取って、ここを外側から守れますよ」


「いや、でも。結晶が映ってるとまずいのよ。防御装備フラックジャケットとして軍事利用もできるので」


「大丈夫です。それを」


「あ、何この写真」


「ここの小屋で撮ったことにでもすれば、森林区域を守りながら側も守れますよ」


「あなた。本当にすごい、写真家なのね」


「撮りたいものを撮っただけです」


「ちなみにそれは、わたしの背中です」


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不死鳥なんていない (夢と幻想 連作Ⅰ) 春嵐 @aiot3110

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