第4話 迷いの樹海を彷徨えば ②
もう疲れてしまいました。
歩けど歩けど視界には相も変わらず退屈な樹、樹、樹。それに泥濘みは残酷にもボクの足を絡みとっては体力を奪っていきます。跳ねた濁水が矢鱈と目に入るのですが、拭う気力すら既に底を突いていました。
大木の真下に落ち葉が沢山積み重なってまるでクッションのようなのです。ボクは残った力を振り絞って命辛々に倒れ込むと、あぁなんと気持ちいいものでしょう。巨大な傘は太陽の光を遮っているにも関わらず、枯葉は不思議と温もりを帯びている。
神様がくれたご褒美なのでしょうか、ここまで頑張って進んだボクに対しての。ボクには恩恵を賜る以外の選択肢はないに等しかった。否、恐らく仕組まれた罠だとも薄々勘づけど、尚享受する他なかったのです。
余りにも心地好い、ボクの意識がこのまま土壌に吸取られてしまうような錯覚に陥るほどに。昔しゅうくんが読んでくれた本に、ボク達は土に還れば草木に生え変わり、小動物やら小鳥やらが其を食べて云々とありましたが、要するに『生命は循環して尽きる事無し』。だから杞憂に過ぎない、身を委ねて寐るだけ楽でした。
もしかすると目覚めた先には元の世界が迷子のボクを待ち構えているのではないでしょうか。悪戯っ子のしゅうくんは不安なボクを嫌程揶揄うに違いありません。しかし幸せとはそんなものでしょう?
問い掛けるも虚しく、軈て真っ暗になって消えました。
雪の嵐 野間戸 真夏 @nomadthecrow
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雪の嵐の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます